消費税の未来・増税される側の「新しい判断」も聴いてください
日本の消費税は、軽減税率を導入することで、来年2017年4月から、標準税率が10%、軽減税率が8%に改正されることが決定した。法律案が成立したのは今年2016年の3月29日である。
その後6月1日の安倍内閣総理大臣記者会見で、2年6ヶ月間、増税の延期をする「新しい判断」が示された。
政府は消費税法改正案を、平成28年2016年の7月または9月以降に開かれる、第191または192回国会に提出する方針を決めている。
平成31年2019年10月まで、30ヶ月の増税延期となる予定だ。
過去、消費税が導入され、増税が実施されたのは、すべて4月。
10月に税率が変更された例は無い。駆け込み需要の対象品が、秋冬ものになり、以前とは目先の変わった増税風景となるようだ。
しかし、次回の増税が実施される期日の延期が、現在法律で決まっているわけではない。来月から半年間くらいの期間に、「社会保障と税の一体改革のための改正消費税法(税制抜本改革法)の附則第1条3項」の施行日のみは改正されなければならない。
本気で増税される「その日」を考えるならば、過去の例にならい4月から増税というのも会計年度に合致しているので、順応しやすい。
電化製品の買い時を丹念に調べたブログを紹介する。
いずれも高額商品は夏冬のボーナス支給時期を基準に、新製品の発表時期が決まっているようだ。となると10月1日からの増税ならば、3月から5月に発表された新製品を、9月30日までに購入する消費行動となる。ボーナス支給から2ヶ月から3ヶ月くらいでしょうか。ただ9月すぎに発表される新製品を選択する時間の余裕は少ない。
一方4月に増税の場合は、12月のボーナス支給から3月31日まで4ヶ月間の商品選択購入の時間的余裕が生まれる。秋発表の新製品を含めて、品定めする期間は半年間が確保される。翌年の東京オリンピックを控えて、電化製品の購買意欲を大切にするなら、もう一度、増税開始時期の検討は必要かもしれない。
岩本沙弓氏の現場主義の経済学に、消費税の未来・を見る
昨日読んだ岩本沙弓氏の現場主義の経済学「増税延期に使われた伊勢志摩「赤っ恥」サミット(後編)」に、私の待ち望んだ未来からのプレスリリースが掲載されている。
欧州委員会 - プレスリリースVAT行動計画:欧州委員会、EUでVATを近代化するための措置を提示 |
http://europa.eu/rapid/press-release_IP-16-1022_en.htm?locale=en
ごく簡単に内容を推察すると、そのアイデアとは、EU域内諸国間の商取引には、すべてVATを課税する。たとえ国際間の輸出入取引でも、輸入国の税率によって、輸出国に税額を含めた金額を送金する仕組みとなる。個々の輸出事業者に対する還付制度が必要無くなり、各国間で相殺された税額が、まとめて国ごとに決済される仕組みらしい。
例えば
A国輸入 本体価格 1000ユーロ VAT税率10% 支払総額 1100ユーロ
B国輸出 本体価格 1000ユーロ VAT税率20% 受取総額 1100ユーロ
B国からA国へ100ユーロ返金
VATは消費地での課税が原則なので、B国の輸出業者は、取引相手の税率を調べて請求書インボイスを発行する必要がある。
EU28カ国それぞれ標準税率の他に軽減税率、超軽減税率、食品、医薬品、書籍などの税率が定められている。多品目の商品を扱うネット物販業者にとっては、取引先国の税率課税判定を厳格に管理することが求められる仕組みとなっているようだ。
B国の輸出業者は、請求書として発行したインボイス額から、仕入れ経費のインボイス額を差し引くだけで納税額が判明する。
その納税事業者は、判明した納税額をそのまま国庫に納税をする。
国は関税地で、インボイスに記載された国名とインボイス額を記録し、その出入りを管理すればよい事となる。
ここで注意する点は国ごと、品目ごとに異なる税率を適正に、輸出業者が課税判定する作業となる。この時点で、税率に誤りがあれば、売買双方のどちらかに、自らのVAT申告の時になって、不利益と利得が発生する。ゆえに売買双方が完全に合意をする税額、税率の決定が保証される。
この方法により、VATのC効率性が高まると同時に、EU各国のVAT税率が下方に修正される可能性も出てくる。また複数税率の単一税率化は課税判定の合理化に直結する。
しかしこの方法が実現したとしても、批判の強い逆進性対策には寄与しない。仮にVATが直接税であるなら、個人個人の所得に応じた税率を設定することが可能となる。
このアイデアの方向性はまさしく未来を指向している。インボイスを電子的な情報に置き換えることが容易になった今なら、さらに工夫を重ねる事も可能だ。
例えば事業者が受け取る税額は、電子的なポイント数値でも用は足りる。最終消費者の金融機関口座から、直接国庫口座へ税額を振り替えることが可能であれば。
VAT行動計画:欧州委員会VAT Action Plan: European Commissionでは、もう来年2017年には「クロスボーダー取引(単一欧州VATエリア、REFITプログラムの一部)のための決定的なVATシステムの提案」が提供される予定となっている。
岩本沙弓氏の述べた「これから3年、消費税の在り方を根底から考え直す」の言葉の通り、日本でも欧州に真似をされるくらいの仕組みを作り出すことが必要です。
このsmarttaxnoブログ「消費税の未来・」の提案である、消費税の直接税化の意味と方法を、振り返ってお読み頂きたい。欧州委員会の方式を、さらにバージョンアップをして、消費税額を実体マネーではなく、電子的なポイント数値で交換相殺することが可能になります。
A 消費税(VAT)の直接税化 Direct tax of consumption tax (Value-added tax)
B 決済数値の複数化 Multiple of settlement numeric
1、本体価格 Base price
2,税込価格 Tax-included price
3,支払金額 payment
C 税額をポイントで支払う Pay at the point the tax
D 納税意思を記録する To record the tax decision
E モバイルで税額情報を伝達する To transfer tax information on mobile
以上のキーワードがVAT行動計画:欧州委員会への提案となります。
Will be proposed to or more keywords is the VAT Action Plan: European Commission
Sera proposé ou plusieurs mots-clés est Plan d’action sur la TVA: la Commission européenne
消費税の未来・大間のマグロは消費税を飲み込むか?
今年11月には、築地の市場は豊洲に移転をする。移転先の広々とした場内で、安全清潔に効率よく生鮮食品が,取引流通されるなら都民としても喜ばしい限りだ。
今回は、せり売りの王者「大間のマグロ」にまつわる消費税の話をしたい。
寿司屋でマグロを食べた人がマグロの最終消費者。対して津軽海峡でマグロを釣り上げた人が生産者となる。
全国漁業組合連合会の「我が国漁業の現況と消費税引上げにかかる課題」によると、小売価格の28.1%が水産物を水揚げした生産者の受け取り価格になるそうだ。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/tenken/05/shiryo03.pdf
② 小売価格に占める流通経費等の内訳(水産物、青果物) 出典:食品流通段階別価格形成調査(2010年度 )
この図表には、青果物ならば、小売価格の45.5%を生産者が受け取っていると図示されている。水産物の流通経費が割高であることを示す数字と言える。
前回の話に引き続き、最終消費者が支払った消費税額は、全額が国庫に納税されるわけではない事と、特例措置という法律により、かろうじて制度が保たれている事を検証する。
マグロの寿司の値段は時価であっても、ひと皿100円であっても、お客様が満足ならば申し分無しだ。レジで本体価格に消費税が掛け算で印字される場合もあれば、寿司屋の大将が、五千円、一万円と切りよく計算してくれてもよい。お客と寿司店の双方が納得して飲食代が決済されれば何の問題も無い。
いずれの場合でも、現在であれば、支払った金額には8%の消費税が含まれている。増税延期も決まったことではあるし、ここでは軽減税率の計算などという面倒な話を絡ませることなしに、今食べたばかりのマグロの消費税の行き先について述べる。
税率は10%とする。寿司店で客は税込1,100円を支払う。マグロを釣り上げた漁師の受取額は330円とする。築地のせり市で、550円で競り落とされたマグロであっても、産地出荷業者を通してせりに出品されるため、手取り額はこのような数字になるらしい。
近年は競りにかけられる魚も少ないそうだが、ここでは消費税の流れを説明するための数字として見て頂きたい。
さて、そのせりであるが、落札価格に消費税額は含まれるのだろうか。この点を説明する公式の見解が、以前にも引用した財務省のホームページに掲載されている。
財務省「適格請求書等保存方式の導入」というPDFである。
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/keigen_03.pdf
表紙を入れて五枚目に売上側と仕入側に分けてその特例が記載されている。このPDFの説明は、軽減税率制度が施行されてからのものであるが、右上に小さい文字で、現在の消費税法特例とほぼ同じと記載されている。
つまり、マグロを出荷する漁業者が免税事業者であっても、仕入税額控除可能とはっきりと特例が定められている。結論はせり売りのマグロの落札価格には消費税が含まれているということになる。
ならば漁師が受け取る330円には、30円分(税率が10%の場合)の消費税が含まれているという計算となる。
そしてこの漁師が年間1000万円以下の売上なら非課税、5000万円以下の売上ならみなし仕入率(第三種70%)。それ以上なら、本則課税が適用される。
ここまでの説明であれば、せり市場に出品する漁業者の売上高によって、免税、簡易課税措置はあるにせよ、しっかりと消費税額は国庫に納税されるのであるから消費税が制度として疑問ありとは言えない。
ところがである、せりによって税込価格は決定する。今後消費税率が2019年10月に上がったとする。その前日の9月30日と10月1日とで、マグロの落札価格がぴったりと2%分上昇するのであろうか。
少し遡って消費税率が5%から8%に上昇した2014年4月にせりの価格は3%上昇したのだろうか。二つとして同じマグロなどあり得ないので検証は不可能であるが、少なくとも本則課税の漁師にとっては、せり値も税率分上がってもらわないと、利益からの持ち出しになってしまう。
築地市場から川下の流通段階であれば、消費税額転嫁の根拠となる価格もせり値によってはっきりとする。
しかし農水産生産者から見れば、自分が納税する消費税額は、農水産物が取引される市場によってのみ決まってしまう。はたしてその売り上げた農水産物価格に消費税額が本当に含まれているのかなど、全く確かめることも不可能だ。
ここで、消費税制度を説明するために作られた画像を紹介する。だれでも一度は目にした説明図だ。
この図の製造業者の納付税額の部分には、納税額4000円となっている。この図の通りであるなら、先の330円のマグロを釣り上げた漁師は30円を納税しなければならない。(税率10%、本則課税として。現実には経費にかかる消費税額は控除される。)
しかも市場や地方出荷業者から受け取った330円という金額に、税額が転嫁されているかどうか一切確かめることも出来ないままに。
そのうえ軽減税率制度が施行され、インボイス適格請求書等保存方式が開始されると、漁業の仕事にかかる経費はすべて課税事業者から仕入れ、買い求めなければ、経費にかかる消費税額の控除はできなくなる。
2004年4月1日から店頭価格の総額表示が義務付けられた。そして今は税率上昇段階にあるので、経過措置として、本体価格(税抜き)表示が認められている。
そして転嫁対策特別措置法により、買い叩きや本体価格での交渉の拒否について厳しく禁止行為が定められている。それであっても、漁師たちが獲ったマグロは内税取引が強制されている。市場のせり値が外税に変わることで、漁師たちは安心して漁に出られると思うがどうであろうか。
(今気づいたが、この図の製造から小売業者の「売上げ」金額の部分には本体価格が書かれている。通常売上げといえば税込価格だと思う。この三つの事業者は外税方式の会計処理なのだろうか。この図では単に「売上げ」という部分を「本体価格」と訂正すれば良い。)
今後、軽減税率制度が現実になってしまった場合、ほぼ永遠に経過措置、特別措置、特例措置が次々に連発されるおそれがある。ひとつの嘘をついてしまうと、二十の嘘をつかなくてはならなくなるという。
ユダヤのことわざを添えてこの文を終える。
「一つの嘘は嘘である。二つの嘘も嘘である。三つの嘘は政治である」
消費税の未来・白タクウーバーでアベノタックスを考える
Uber Technologies,Inc.(ウーバー社)が、指向するビジネスモデルは、一般消費者が望む需要に一般庶民が応える「CtoC商取引」をインターネットを使い斡旋することのようだ。
例えば民泊。海外から来訪した旅行者に、一般家庭が宿泊場所を提供する。例えば古着のリサイクル。古本CD、中古車、一戸建ての家屋。全てのリセール財産は、インターネットオークションや独自のアプリで一般消費者から、一般消費者へ再販売する事が可能な時代となった。
もちろん民泊にしろ白タクにしろ、日本では種々の法的な規制がある。旅客を安全に移動させる、宿泊させる。これらサービスを利用する消費者の安全は最大限に守られなければならない。しかし地域的な特区制度や、利用者の安全を保証する保険加入義務が実施されたうえで、運用実行が現実となれば、ここでも消費税の本質に関わる問題点が発生する。
今回の「消費税の未来」では、消費者が消費者に対価を支払う「CtoC商取引」に、消費税を課税できるかについて考えてみる。
国税庁のホームページ
ホーム>税について調べる>タックスアンサー>消費税>基本的なしくみ>No.6109 事業者とは
によると「消費税は、国内において事業者が事業として対価を得て行う取引に課税されます。」
と書かれている。つまり一般庶民が不要な衣類を、ネットオークションで換金しても、消費税は課税されない原則となっている。
仮に今後、ウーバー社と支援企業により、この日本で白タク斡旋が可能となった場合、「商取引」にかかる消費税はどうなるのであろうか。
ウーバー社のアプリの仕組みを想像してみる。白タクの利用希望者は、ウーバー社のアプリをインストールする。クレジット決済やGPS位置情報、提供された白タクの運転者に対する好感度、などを情報としてウーバー社に送信する仕組みと思われる。
支払い決済はクレジット支払いとなる。支払先はウーバー社なので、当然に消費税は加算されている。例えば税率10%で1000円の乗車距離ならば、支払い決済は1100円となる。
ウーバー社の斡旋手数料を10%とすれば、1100円の税込乗車運賃の内、税込110円を税込手数料としてウーバー社は徴収する。そして白タク提供者には税込990円が支払われる。
なぜなら、今年の3月に可決された軽減税率の仕組みでは、インボイス制度導入後3年間は、免税事業者からの仕入れについては、仕入れ税額相当額の80%を控除することが可能となっている。
つまりインボイス制度が導入されない現在であれば、100パーセント税額を控除可能であるので、白タク提供者には税額まるまる90円を含めた支払額990円が対価として保証される。
(リバースチャージという手段もあるが、この手法については、改めて詳述したい。)
ここで結論とすることは、ウーバー社が売り上げる数◯◯億円の売上の内、かかる消費税の納税額は、ウーバー社が手にする仮に10%の手数料のさらに10%でしか無いという事実である。
仮の数字で表すならば、ウーバー社の口座に入金する税込金額が110とする。手数料は10だ。その一割の1がウーバー社が納税する消費税額となる。最終消費者が支払ったはずの10の消費税額のうち、9は免税事業者又は一般消費者ドライバーが手にする。もちろん車両整備や保険料、ガソリン代にかかる二重課税の消費税額は原価として存在する。しかし9のうち国庫に納税されるのは一部分のみ。
つまり100の売上高にかかるはずの消費税額10のうち、斡旋手数料にかかる消費税額1の部分しか、直接的には国庫に納税されることはない。
これらの話は法定外の仮想に仮想を重ねた想像上のことなので、なんとも心もとないが、「税の信義」を追い求めたら、ふと思い至ったことです。
ちなみに現在の消費税法は、BtoB,またはBtoCの関係においてのみ、徴税機会を設定していると思われる。
これからはCtoC 消費者間取引にも着目をして、課税ベースを拡大するのもひとつの案と思われる。アベノミクスも聞き飽きた。これからはアベノタックスで勝負はいかがだろうか。
決済数値の複数化がアベノタックスを支えることは間違いありません。
消費税の未来・回転寿司の在来線と新幹線の未来
前回の話は、納税意識(納税意思)が消費者と事業者のあいだでくるくる回ることで、消費税の制度が成り立っていることを述べた。現行の消費税法を、「搾税機」と例えた表現は不穏当ではあるが、消費税制度全体を俯瞰すると導かれるアルゴリズムを視覚化した表現なので、許していただきたい。
また「でっち上げ」という表現も、書物に記されたある官僚自らの口から、消費税法に対し発言された言葉なので、情景描写として使わせていただいた。
くるくる回ると言えば回転寿司
新幹線が開通して在来線が廃れるというのは鉄道の話。同じことが回転寿司にもあるそうだ。
今回の話は庶民に親しまれている、100円均一価格を売りにする回転寿司チェーン店を例に、価格と物価と需要の関係を考えてみたい。
今や回転寿司店で、お好みの寿司を注文するのは当たり前になっている。タッチパネルで注文をすると素早く特急レーンに乗った寿司が、お客の目の前まで配送される。
上記の記事によれば、在来線の利用率は3割という。確かに同じネタでも、回っている寿司よりも握りたてのほうが感じが良い。
かっぱ寿司では在来線を廃止して、二本の特急レーンを設備するそうだ。多分特急レーン上の新幹線車体は、行き止まりの一本のレール上を往復していると思われる。
となると一件の注文品を配達している時には、そのレールはその注文に占有されてしまう。そこでレールを二本にして、二件の注文品を同時に配送可能とするようだ。
もちろんお店の座席配置の形状によっては、山手線のように周回軌道を作る事もできる。しかし一般的には櫛型のレール配置は多数の客席数を設置できる。
ここで在来線と新幹線の双方が共存できる解決策を提案したい。この案は100円均一を売り物にする回転寿司店でのみ有効な方法です。
回っている寿司の価格を安くする
同じネタでも、回る寿司は安く、注文品の寿司は少し高く、価格を設定できないだろうか。例えば一皿本体価格100円の価格設定なら、回る寿司は本体価格95円、お好み特急便は105円となる。
もちろん回るお皿と注文品のお皿の色は変えなくてはならない。
この方法で、お店側として、経営上コントロール出来る要素がいくつかある。
原価率の低いネタを在来線に流し、安さで消費を誘う。
原価率の高いネタであっても、在庫が多くて早く売りさばきたいときには、在来線に流す事ができる。または季節の三点盛りなど高額品の皿を在来線に回し、ちょっとの安さで消費を誘う。
さらに回っている皿の消費率をあげて、時間経過による廃棄を減らす
回っている皿は「安いネタ」だなとお客に見透かされても、季節によって魚には旬がある。単純に回る皿の価値が低いとは言えない。
少なくともお店側は、売りたい商品を売りさばくための主導権を握ることができる。
回転寿司チェーン店のはま寿司では、平日の価格を、土日祝よりも10円安くしている。私の行くはま寿司に特急レーンは設置されていないが、注文皿を少し高くする方法はかっぱ寿司同様に導入はできる。もちろん平日の割り引きシステムも併用できる。
売上利益上昇は見込めるか?
このような一物二価を、サービスの違いによる価格差と、お客様から理解が得られれば出来ないことはないと思う。実際の売上利益に影響があるかは、廃棄率の減少があるかどうかです。
大手の巨大寿司チェーン店のように、システム機械を大幅に入れ替えができる店ばかりではありません。新幹線、特急レーンが備わっていない回転寿司店も多くあります。
大きな掛け声で、握りたてを教えてくれるお店も有ります。この回る寿司を安くする方法は、ほぼ全品100円というような回転寿司でしか採用出来ません。
お皿の色の種類が何種類もある店では、皿の色が倍になってしまいます。
トトメス5世氏のブログにあるように、回転寿司の回転レーンがなくなれば、廃棄率はゼロになります。注文品の配送が二本の特急レーンによってスムーズに行われれば、廃棄ロスもなくなり、利益率も上がるのでしょう。
かっぱ寿司が本気で在来線レーンを廃線とするにも、お金はかかります。今後新幹線が着工されるまでの間だけでも試してみるのはいかがでしょうか。
ここからが消費税の話になります
在来線の回転皿にのった寿司が風にあたって乾いていきます。時間の経過により廃棄されます。もしその廃棄される寿司の比率が減れば利益率は高くなります。
ところが売上高は増えるでしょうか。注文皿比率によって売上高は変わってきますが、私が想像すると、総売上高は変わらない気がします。
価格設定が今までの100円に対し95円と105円にしてあるからです。
つまりその回転寿司店のランチタイムに入店する客の数や食べる寿司の量は始めから決まっているのです。需要は事前に量れなくとも、結果として来店客数や消費される寿司の貫数は、決まっていると思います。同じネタに価格差をつけても、総消費量は増えも減りもしないと思えるのです。
その総需要を増やすのは、新聞折り込みチラシなどの広告です。ここではその点は考えないでおきましょう。
なにが言いたいのか、はっきりさせると、来年、消費税率が8%から5%に下がったとします。すると一時的に物の価格は下がると思います。需要も少し上がるかもしれません。
しかし、ほんの二、三ヶ月のあいだに物の価格は元に戻る気がします。消費税額が下がった代わりに、物価は上がってしまうのです。食品から日用品まで物の本体価格は常に変動しています。季節によっても。
まっとうな商人魂があれば、その増えた需要額を、価格の値上げによって吸収しようと考えるのは当然です。
となると念願の2%のインフレも、瞬間的ですが達成してしまいます。ただこれは継続的ではなく一時的なことです。
ここで気づいていただきたいことは、消費税率が何パーセントであっても、税込の流通価格はあまり変化しないかもしれない点です。
税率が10,12,15と上がれば、同じ比率で税込販売価格が上がるのではなく、流通価格はそのままで、事業者は必ず利益率が落ち、消費者は貯蓄できる金額が少なくなるので、買い控えがますます進む気がします。私としての想像力はこのへんが限度です。
消費税の未来・絶妙に命名された「消費税」と納税意識
消費税という名称が、誰によって命名されたのか、私は知らない。当時の自民党税制調査会であるのか、大蔵省の官僚によるものなのか。
消費税法が成立したのは1988年。大蔵大臣は首相兼務の竹下登氏であった。この消費税法という名称は、その後の日本に大きな功績をもたらした。
この消費税の申告納税者は事業者である。事業税、営業税と呼んだほうが実体を表している。1987年中曽根内閣で国会に提出された「売上税」法案は、事業者を中心に国民的な反対を受け廃案となっている。
翌年の12月竹下内閣で成立した消費税法は、売上税と異なり税額票方式を採用しない新型間接税であった。特徴は以下の5点となる。
1,税額票なし 2,帳簿上で税額を計算する 3,特例措置として簡易課税制度を採用 4,税率は3% 5,非課税項目を10項目に絞り原則課税とする
参照 我が国の消費税の現状と今後の方向性について(中間報告)2012 日本公認会計士協会
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/files/2-3-24-2b-20120524.pdf
今回のブログでは「消費税」という名称が納税意識に与えた影響を考えてみたい。
循環迷路に落ち込むな
「売上税」から「消費税」と名称が変わり、新型間接税は成立した。この消費税制度を円滑に運用するために、国民が心がけることは
1,誰が納税者か、担税者か、を考えない
2,転嫁の有無を考えない
3,逆進性を考えない
この三点に尽きる。それぞれの課題に真剣に取り組んでしまうと堂々巡りの迷路にはまり込んでしまう。しかし聡明な先人が命名してくれた「消費税」という名称のおかげで、国民の納税意識は輝かしく成長した。何しろ初めてのお使いの時から、「国民は消費税を払って社会負担するんだよ」とサラリーマンのお父さんも我が子にさとす事ができる。
一方どんな商いの事業者も、消費税の負担者は、名の通り消費者と信じ込むことができる。原価経費に利益を乗せて、販売価格を決めさえすれば、あとは税率かけるだけ。消費税申告の納付書を銀行窓口に出す時だって、お客様からの預かり物と納得できる。そこでほんとに転嫁ができているのか、などと思うのは、売上が減ってしまった事業者だけだ。売上高が法定に達していなければ、大抵は免税か簡易課税事業者となる。
昼間は事業者、夜は消費者、等しく国民は双方の立場でこの税に向き合っている。何の矛盾もない調和された税制度だと誰もが思う。
掟を破ったのは誰だ
消費税率3%までは、確かにそうであった。5%になってすこし風向きが変わった。もしかしたらせっかく作り上げた日本式消費税を台無しにしたのは、国そのものかも知れない。税率が8%になった今、政府自ら「逆進性対策」という、口に出してはいけない政策を実行してしまった。
もうすでに幼少の頃から、消費税は消費者が支払っていると、納税意識を教えこまれた青壮年層が育っている。税率が上昇すれば、所得階層によって逆進性は顕著になる。
せっかく予定調和の世界で回り続けていた納税意識も、税率上昇と逆進性の一言で、中心棒がブレてスピンバーストしてしまう。回転ドラム式の搾税機も、回転速度を下げて抽出する油の量を減らす他は無い。
他に道があるとすれば、やはり個々人の納税意思をデジタル化する道だ。
以下、昭和初期のプロレタリア文学作品ふうに少し言葉を悪く使って伏せ字付で仕立ててみた。
✖✖✖法という決まり事をでっち上げられて、国民は回転搾油機に足蹴にして放り込まれたのか、自ら飛び込んだのかわからない。
誰が担税者か納税者かなど知った事では無い。ぐるぐると目が回った国民は、回転ドラムが右回りすれば消費者がたらたら。左に回れば事業者がたらたら。どっちに回転しても油が搾り取られてゆく。
しかも昼間は事業者、夜は消費者と国民は立場を変える。となると一日中油は搾り取られるわけだ。
それでも国民は慣れてきて、回転ドラムの中心にいれば、体内から搾り取られる油が少ないことに気づいた。しかしそれに気づいても低所得者はドラムの壁に張り付いたまま、強い遠心力には抗えない。
消費税の未来・財務省「消費税の軽減税率制度の導入」ページ読後感想
財務省ホームページで4月22日にアップされた「消費税軽減税率制度の導入」を読んだ。
なかなかの長文ページなので、仕事場のカラーレーザープリンターでA4版用紙に印刷した。概要と対象品目を除き17枚の頁数となった。用紙とインクがもったいないと思いながらも、仕事の合間に出先で目をとおすのだから仕方がない。
図表にイラストが添えてあり、これなら私にも理解ができるかなと思い、「適格請求書等保存方式の導入」を見始めた。現行制度・区分記載請求書・適格請求書の各保存方式が縦割りで三列に並んで比較ができるようになっている。
ところが見本の請求書に書かれている金額合計がどうしても合わない。六種類の請求書が並んでいるが、みな何かの行が省略されているようだ。やはり老眼鏡は欠かせない。メガネを掛けて見てみれば、牛肉5400円、割り箸5500円の下に省略を意味する小さい点が二つ打ってある。
次のページの「区分記載請求書等保存方式」の請求書の見本にはしっかりと点が三つ縦に並んでいるので、省略の意味はすぐに分かった。あまりにもつまらない感想で意味も無いが、点々は三つにしてポイント数を少し上げたほうがいいと思った。
まさかこのPDFを印刷して読む国民がいるなどとは、思っていなかったのかも知れない。しかし多額の税金を使って作られた制度であるのでおろそかにはできない。しかもこのPDFには、このブログの主題である、消費税の未来がしっかりと書かれている。
神は細部に宿るという言葉を思い出し、先の頁の一番小さい文字を見つけた。
(注)売上税額を「積み上げ計算」する場合には、仕入れ税額も「積み上げ計算」
と書かれている。何の事かと思い、三枚目の頁を見ると(端数処理による益税を防止)
と説明されている。つまり軽減税率対象品目8パーセントでは、12円以下の課税額の場合、小数点以下の端数の税額は切り捨てとなる。これは総売上金額から割り戻して税額を計算する方法を使わずに、売上金額に含まれる税額を「積み上げ」て受け取り消費税額を計算する場合には、控除される支払い消費税額も「積み上げ」て計算しなければならないという事らしい。
その益税に結びつくアルゴリズムもよく理解できないが、そんなこともあるのかと関心してしまう。たしかに消費者一人が一日0.99円分の消費税額を切り捨てられていたら、国民全体で、一日一億円以上の税収が減ってしまう。さすがに財務省の神の手になる技と思えば良いのだろう。
ただし10パーセントの標準税率で、本体価格10円以上の売買ならば、端数は発生しない。端数処理による益税額を言うよりも、請求先の取引相手の登録番号を記入したほうがもっと適格な請求書になると思いますがどうなんでしょうか。
しかしこの老眼の私でも一つだけ「訂正したほうが良いと思われる文言」を発見した。イラスト色付きページが終わって、「適格請求書等保存方式について」という題でローマ数字のⅠからⅤのⅣの部分に書かれている、「割返し計算」という表現だ。この言葉が三箇所使われている。ところがその下のⅤその他には、割戻しの計算となっている。
また前段のイラスト色付きページではすべて「割戻し計算」と表現されている。ここはどちらかに統一したほうが良いと思うが、ここにも何か別の意味があっての事でしょうか。