消費税の未来・平田敬一郎著「税金の基礎知識」が語る60年前の税の常識

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昭和29年のことです。46歳になる現役の国税庁長官が一冊の本を著しました。タイトルは「税金の基礎知識」。昭和27年に第二代目の国税庁長官に就任した平田敬一郎氏は、昭和30年7月まで在任し、続けて大蔵事務次官職を昭和32年5月まで務めています。

税の専門家である著者と、一般市民を想定した弁護士との自問自答の会話形式で全編が綴られています。その目次を見るだけで、親しみやすさが伝わる好著と思えます。

税を徴収する国税庁のトップが、一般の国民向けに、税務に携わる現場に向けて、あるいは制度を設計する政治家や官僚に対して、わかりやすく丁寧で、率直な言葉を用いて一つひとつ、決して庶民感情を忘れること無く語りかけています。

高度成長に飛び立つ頃の日本の税の常識や、理想と現実、そして課税庁トップが知っている信頼性のある数値が、全編に網羅された355ページの著作です。

 その「はしがき」と目次の一部を、ここに書き写してみます。

   はしがき

 納税者の身になって、仕事のやり方に反省と改善を加え、重い税金が少しでもらくに、そうして、どこどこまでも納得づくで納められるように努めて見たい。

 税金は誰にだっていやなものに違いない。しかし、いやだと言っても、自分たちの政府が有り、自分たちの自治体がある以上、応分の税金の負担はこれまた避けられるものではない。いやだと思って頬かむりしていたんでは、民主国家の国民としてどうかと思われるだけでなく、却って損をする場合がないとも言えない。どうしてこんなに税金が重いのか、ということから国政や市町村政などに対する真剣な批判と考え方が生まれてくる。また、税金の知識をつかむことによって、合理的に軽くたやすく納められる途も開けて来る。いやなものは放って置けということはどうかと思う。

 私は納税者の納得をうる最良の途は、税金に関する苦情つまり不平不満の声に、虚心坦懐な気持ちで、耳を傾けることから始まると思っている。そうして実際もそのことに務めて来た。数多くの苦情の中で、一般的と思われるような問題をここに拾いあげて、答えて見ることにした。できるだけ軽い気持ちで読んでもらいたいので、なるべくザックバランにやることに心掛けた積りである。

 税金のことは専門的でわかりにくいというのが、世間の定評のようであるが、私はかねがね、本当の専門的な知識は本当の常識に通ずるものだと思っている。先般短い時間であったが、徳川無声さんと対談する機会を得て、特にこのことを感じた。本書が、税金に関する常識の普及に、そして納税者と国家公共の双方に少しでも役立ちうるならば甚だしあわせである。

 なお、本書が生まれるについては、出版社の野村、高岡の両氏に大変お世話になった。そのことをしるして感謝の意を表したいと思う。

 昭和29年3月

  吉祥寺の寓居にて 著者しるす

目次

第一部 こんな重税ひどいじゃないか

第二部 税金の昔と今

第三部 税金今昔つかい方

第四部 直接税か間接税か

第五部 減税に偽りはなかったか

第六部 シャウプ税制逐次大修正

第七部 納税はどこまでも納得づくで

第八部 課税の公平

第九部 納税者の人権擁護

第十部 査察と差押公売

第十一部 わかりにくい税法と申告書

第十二部 徴税能率の改善

第十三部 今年の税制はどう改正されるか

「平田敬一郎 税金の基礎知識 財務出版株式会社 昭和29年5月25日 再版発行」 より

 

この目次の各部には、それぞれ数篇の細目タイトルが付けられており、例えば第二部には「鶏三羽に税金かけるせち辛さ」というのもあります。

また廃止された取引高税や、今後の間接税の在り方、当時の欧米の税制度の分析などについての記述もあります。

そしてシャウプ勧告では、地方税としての事業税に付加価値税が検討されていたこともわかります。この付加価値税とは、営業者への直接税であり、課税標準を総売上高から特定の支出額を控除した金額とされていました。

しかし実際には昭和29年の地方税法の改正により、未施行のまま廃止されています。

消費税制度の未来が定まらない現在、過去をひもといてみる事もアリかなと思います。

 

 

 

消費税の未来・先送り症候群にハマった消費税インボイス

インボイスとは事業者がものを売った時に発行する請求書の事です。課税商品を売った時には課税額も記入されます。事業者が消費税を税務署に納税する場合、ものを売った時に発行したインボイス記載の受け取り税額から、仕入れや、経費にかかった支払い税額を差し引くことで、納税額が計算される原則です。

現在の日本の消費税制度では、年商5000万円以下の事業者は、みなし仕入率で税額が計算されます。本則課税の事業者でさえも課税売上と課税仕入れ、経費に税率を掛け算をして、納税額が計算されています。単一税率だから出来る業です。

軽減税率が導入された場合、4年間は「区分記載請求書」という簡略な方法で税額を計算します。その2年後に「適格請求書」という日本式インボイスが使われることとなりました。その時点で「差し引く」という計算方法が、日本の消費税でも、選択的ではありますが、使われることになります。

ここまでの仕組みが今年の国会で法律として成立しています。

その後「新しい判断」により、10%への増税が二年半延期されました。

この時点でインボイス導入時期は、明らかにされていませんでしたが、インボイスの導入時期も二年半の先送り方針が決まったようです。(2016年7月28日付け新聞に掲載)

増税先送り」イコール「軽減税率先送り」、「インボイス先送り」イコール「計算方法改革先送り」に至る行動がどのような心理に由来するものかを少し考えてみました。

先送り症候群には6つのタイプが有るという。

「先送り症候群」6タイプ別病状と処方箋:PRESIDENT Online - プレジデント

①完璧主義タイプ ②効率主義タイプ ③心配性タイプ ④白昼夢タイプ ⑤自分探しタイプ ⑥リスクテイカータイプ(危機を好むタイプ)だそうです。

政策の先延ばしは、人間個人の場合と違って集団の心理と言えます。しかし今回の場合、ひとり安倍首相の「新しい判断」によって決定されたわけですから、人間個人の心理と同様とも思えます。

安倍首相が「新しい判断」と言うからには、単なる「経済情勢による判断」以外の意味も含まれているはずです。

私には今回の増税延期の心理が、どのタイプに当てはまるのかよくわかりません。あるいはいくつかのタイプが複合されているのかも知れません。

そこで各タイプごとに増税を先延ばしにした理由を、私なりに勝手に想像してみます。

①完璧主義タイプ 「中途半端ならばやらないほうがマシ」

今度の国会でせっかく成立した軽減税率の法案。しかし経済学者や税制度の専門家、現場の経営者、税理士の団体などなど、こぞって軽減税率への賛同は見られない。財政の専門家は税率を10%にすることには賛成だが、逆進性対策としての軽減税率には疑問を持っている。あるいは税構造には無関心のようだ。

給付付き税額控除、総合合算制度という手段もあるが、一部の所得が捕捉されない以上完全な制度とは言えない。

処方箋>>>国民がこうむる迷惑は重々承知。完璧な税制度など世の中に存在しないと訴えて、無理を押しても日本式消費税に軽減税率を導入してしまうのが、先送りを避けるための唯一の選択。

②効率主義タイプ 「失敗したくない、成功せねばという心理の裏返し」

本当であれば、いまころアベノミクスで賃金も上がり、消費も増え、2%のインフレも達成しているはずだった。その環境ならば多少面倒な軽減税率であっても国民は受け入れてくれる。ところが現実は違った。このまま来年の増税を実行したら、店員に持ち帰ると嘘を言って店内でハンバーガーを食べる子供の姿と、更に落ち込んだ消費意欲のニュースが世界中に配信される。

処方箋>>>失敗した政策と言われても良いではないか、財政再建社会保障を担うのは消費税だけでは無い。他の税制度も含めて実を取るのが、名政治家というものだ。

③心配性タイプ 「仕事を始める前に悪い結果を予測して手が止まる。」

消費税を増税する判断というものは、些細な事柄では無い。軽減税率導入は今までに無かった消費税の構造大改革だ。心配している暇など無いし、この心配性タイプは今回の判断には当てはまらない。仮にこのタイプであれば、増税延期の判断時期でさえ先延ばしにしたであろう。しかし悪い結果を予測しているのは前記2タイプと共通している。

処方箋>>>予測や心配は冷静な思考から生まれる。軽減税率に変わる新たな税制度のアイデアさえあれば、ネガティブな感情は発生しない。できれば消費税増税再延期の閣議決定がなされるときに、[冷静な判断」で増税開始時期の期日を、2020年4月へとさらに半年間延期していただきたい。その理由は以前のブログに書きました。

 

smarttax.hatenablog.com

 

④白昼夢タイプ 「空想の世界で達成感を得ている」

先送り症候群の中でも最も症状が重いタイプ。このタイプも今回の増税延期には当てはまらないと思いたいが、この半年間の現実を見ていると、症状がかなり重なってしまう。

日本の頭脳と言える財務省の頭のなかで、空想の軽減税率制度というものが、すでに組み立てられてしまっている。しかもその法案は成立している。逆進性を少しでも解消するためにという使命感は、法律上でも達成している。あとは消費税率2%増税のその日が来て、現実に運用されるのを待っている状態だ。

ところが先に述べた経済情勢やら現金商売の商店主の気持ちを考えると、ほんとうにこれでいいのかなと思ったり、マイナンバーを使った還付案などをもう少し研究するのもどうかなあと思ったり、もする。現実の運用をリアルに考えてしまうと手を付けずに先延ばしになってしまう。

処方箋>>>このタイプの患者はヒロイズムに酔いしれる映画の主人公と言われています。次のような筋書きで演出するのはいかがでしょうか。

ヒーローは始めから増税をする気など無かった。自分が組閣する内閣の時代に5%幅もの大増税をしなくてはならない理由もない。

消費税導入で20年が失われ、さらに5%の増税で今後の20年が失われたと、未来の教科書に書かれないとも限らない。

ここは大局を見極め、事を謀る他はないとヒーローは決断をした。

昨年の9月、財務省案がマスコミに批判された時点で、税制度変革の主導権は握った。

軽減税率を導入することで、税の負担感を和らげる口実になることは知っていた。

しかし増税アベノミクスに対する阻害要因となることは許されない。

ならば、自分自身を大魔神の容貌に変え、財政再建の大義のために、無辜の庶民の村々家屋を壊し尽くし、日々の取引決済に、今まで無かった大福帳を適格に記帳する掟を強要した。

新聞だけに特権を与えたのも、遊びごころに過ぎない。

軽減税率が識者に反対されることは最初からわかっていた。

唯一、複数税率と共にインボイスが導入されれば、欧州の付加価値税と同じ税制度になる効果は大いにある。

また、増税があるから消費をしない村人の気持ちも十分に理解をしていた。

ここで6月初めの「新しい判断」が示される。高田美和演じる花房小笹が流した涙に、大魔神の様相は穏やかな武神の表情に変わり、やがて土くれとなって崩れ去り、風の中に消えてゆくのであった。(映画大魔神ウィキペディアより)

ここで映画は終わってしまう。

⑤自分探しタイプ 「先延ばしするのは、自分の中で優先順位が低い」

実はこのタイプが今回の場合、最も当たっているような気がします。

消費税の問題は、財政、金融、経済、貿易、社会保障少子高齢化などの分野に深く関わる政策課題です。

一方外交、安全保障、憲法、エネルギー、環境、教育の分野は、消費税と直接関連することではありません。

もちろん消費税に関わる課題を二の次にしている訳もありません。単にスッキリとした逆進性を解決する策が考えつかなかっただけの事と思います。

しかし結果的に増税延期、インボイス延期となった事も事実です。

究極の選択を迫られた時に、事を進めるか、立ち止まるか誰しも思い悩んでしまいます。しかも国民生活の隅々にまで影響を与える大きな課題です。

処方箋>>>増税延期、インボイス延期の決断は、未来の消費税の姿を考え直す事までも延期にしようという判断ではありません。

幸いに、日本の頭脳が軽減税率の法案を作る過程で、零細商売、農山漁業に従事する家々のお金のながれ、現金商売の実態などの再復習が綿密に為されたと思います。

今回の延期の判断を「新しい判断」と表現したのは文字通りの真実と思います。

全くの推測ですが、軽減税率の詳細を法律化する過程で、何らかのアイデアが日本の頭脳により生み出された可能性があります。

新設された経済財政政策調整官という課長級ポストが、消費税の未来に関わりを持つかどうか、私にはわかりませんが大いに目を引く動きです。

本当に困ったな、何か解決する方法は無いものかと考えた時にこそ発明は生まれます。

新しい判断によって与えられたこの時にこそ、じっくりと未来の消費税を最優先に考えて頂きたいと思います。

アベノミクスを上回るパワーを持つアベノタックスに期待したいものです。

⑥リスクテイカータイプ(危機を好むタイプ)「グズの最終形」

 一度の成功体験はのちのちの行動にまで影響を及ぼします。

ここまでに紹介をした5つのタイプ。妥協を迫られ、段取りも出来ず、人目も気にせず、迷いも無くし、現実を直視する。

こだわりを捨ててしまえば、「一挙に仕事ははかどる」「吹っ切れてしまう」わけです。

その時の爽快感が忘れられなくなり、ぎりぎりまで仕事を先延ばしする事が癖になると、プレジデントオンラインの記事に書いてあります。

今回の増税延期は二度目です。一度目の増税延期も見事なものでした。今回の増税延期の決断直前まで、解散総選挙の憶測は根強いものがありました。

危機を手玉に取る術は人智を超えているとも思えます。現に今回もブレグジットがありました。

そして必ず訪れる三度目の正直の2019年10月までに、新たな究極の決断が用意されるのかどうか、もちろん私にはわかりません。

 

消費税の未来・ケネス・ロゴフ氏の考える税の万能薬とは?

思いもよらない一文が目に飛び込んできた。

東洋経済オンライン2016年6月19日付けに掲載された下記記事である。

toyokeizai.net

ハーバード大学経済学部教授であるケネス・ロゴフ氏(Kenneth Rogoff)は、チェスの天才として名を馳せ、国際金融分野の権威と紹介されている。

この記事の末文に、「理想的なのは消費税に累進制を導入することである。」と書かれている。まさしくこのsmarttaxのブログ「消費税の未来・」とまったくおなじ主張がなされている。

原文ではこう書かれている。

The U.S. desperately needs comprehensive tax reform, ideally a progressive tax on consumption.

現在の米国では消費税や付加価値税は実施されていない。消費税と付加価値税がどのように異なるかは、実のところ私にもよくわからない。税額を計算するときに、消費税の申告用紙で、人件費を含めた利益に掛け算で納税額を計算するのが消費税。

売上げ請求書に記載されたインボイス税額から、仕入れ時のインボイス税額を引き算で計算するのが付加価値税

こんな感じの違いかもしれない。それぞれざっくりとした税額の徴収方法ではあるが、原始的と思える日本の消費税のほうが、徴収効率は高いそうだ。(C効率性 OECD

米国に話を戻すと、米国の各州によって税率の異なる売上税が実施されている。

ケネス・ロゴフ教授の言う消費に累進的に課税するという場合、どのような決済なり、申告なり、納税手続きになることを予想しているのであろうか。

例えば10%売上税の場合なら、店舗で買った花束の代金50ドルに、売上税が5ドルかかるとする。累進的という場合、10ドルの花束なら50セントが逓減売上税。100ドルの花束なら20ドルが累進的売上税。という話も成り立つ。

お店の人が、毎日売上税を計算するのが大変そうなのでこれはやめましょう。

しかし売上税を、間接税では無く、直接税にすることが可能なら、わりあい簡単に、消費額にかかる売上税は所得額に応じて累進的に計算することも出来そうではある。

少なくとも、レーガン大統領が記者に述べたように、税を支払う人は支払った税額を自ら知ること。負担を強いる立場の側はこの納税者がいくら税を支払ったのかを記憶すること。が大切なようです。

売上税も消費税も付加価値税も、少しの工夫で直接税に様変わりさせることが可能な時代のようです。

納税者はレジの前に立ち、お金を支払うときに意思表示が出来ます。お店に消費税額を支払うのか、あるいはお店には消費税額を支払わない意思を示し、自ら後で税額を直接納税する電子的な記録をする。

本体価格、税込価格、実際にお店に支払う金額。この三つの数値を使うことで、電子的な手法を利用して、未来の消費税は累進的な理想の税に近づけるかも知れません。

そして消費税を直接税にするアイデアには、事業者側にとってとても大きなメリットがあります。それは今までのように事業者の懐から納税額を国に支払う必要が無くなることです。例えば受け取らなかった消費税額が電子的にどこかに記録されていれば、課税期間終了後に、その数値をゼロにリセットするだけで納税手続きは終了です。

海外から電子的なコンテンツを買った場合でも、消費者が住む場所で消費税は納税できます。輸出戻し税でさえも、電子的な還付を行えば、納税額はゼロになります。もう現金を輸出企業に支払う必要も無くなります。

増税が延期されたこの期間に、ケネス・ロゴフ教授の理想を夢見るのもいかがでしょうか。すでに教授が用意しているはずの種明かしに期待をしています。

 

 

 

消費税の未来・増税される側の「新しい判断」も聴いてください

 日本の消費税は、軽減税率を導入することで、来年2017年4月から、標準税率が10%、軽減税率が8%に改正されることが決定した。法律案が成立したのは今年2016年の3月29日である。

その後6月1日の安倍内閣総理大臣記者会見で、2年6ヶ月間、増税の延期をする「新しい判断」が示された。

政府は消費税法改正案を、平成28年2016年の7月または9月以降に開かれる、第191または192回国会に提出する方針を決めている。

平成31年2019年10月まで、30ヶ月の増税延期となる予定だ。

過去、消費税が導入され、増税が実施されたのは、すべて4月。

10月に税率が変更された例は無い。駆け込み需要の対象品が、秋冬ものになり、以前とは目先の変わった増税風景となるようだ。

しかし、次回の増税が実施される期日の延期が、現在法律で決まっているわけではない。来月から半年間くらいの期間に、「社会保障と税の一体改革のための改正消費税法(税制抜本改革法)の附則第1条3項」の施行日のみは改正されなければならない。

本気で増税される「その日」を考えるならば、過去の例にならい4月から増税というのも会計年度に合致しているので、順応しやすい。

電化製品の買い時を丹念に調べたブログを紹介する。

www.kosodatedou.com

いずれも高額商品は夏冬のボーナス支給時期を基準に、新製品の発表時期が決まっているようだ。となると10月1日からの増税ならば、3月から5月に発表された新製品を、9月30日までに購入する消費行動となる。ボーナス支給から2ヶ月から3ヶ月くらいでしょうか。ただ9月すぎに発表される新製品を選択する時間の余裕は少ない。

一方4月に増税の場合は、12月のボーナス支給から3月31日まで4ヶ月間の商品選択購入の時間的余裕が生まれる。秋発表の新製品を含めて、品定めする期間は半年間が確保される。翌年の東京オリンピックを控えて、電化製品の購買意欲を大切にするなら、もう一度、増税開始時期の検討は必要かもしれない。

ここは増税される側の「新しい判断」で、増税時期を2020年4月からにしたらいかがでしょうか。36ヶ月の増税延期です。

改正消費税法(税制抜本改革法)の施行日は「平成三十二年四月一日」にいたしましょう。

岩本沙弓氏の現場主義の経済学に、消費税の未来・を見る

昨日読んだ岩本沙弓氏の現場主義の経済学「増税延期に使われた伊勢志摩「赤っ恥」サミット(後編)」に、私の待ち望んだ未来からのプレスリリースが掲載されている。

www.newsweekjapan.jp

欧州委員会 - プレスリリース

VAT行動計画:欧州委員会、EUでVATを近代化するための措置を提示

http://europa.eu/rapid/press-release_IP-16-1022_en.htm?locale=en

ごく簡単に内容を推察すると、そのアイデアとは、EU域内諸国間の商取引には、すべてVATを課税する。たとえ国際間の輸出入取引でも、輸入国の税率によって、輸出国に税額を含めた金額を送金する仕組みとなる。個々の輸出事業者に対する還付制度が必要無くなり、各国間で相殺された税額が、まとめて国ごとに決済される仕組みらしい。

例えば

A国輸入 本体価格 1000ユーロ  VAT税率10% 支払総額 1100ユーロ

B国輸出 本体価格 1000ユーロ  VAT税率20% 受取総額 1100ユーロ

B国からA国へ100ユーロ返金

VATは消費地での課税が原則なので、B国の輸出業者は、取引相手の税率を調べて請求書インボイスを発行する必要がある。

EU28カ国それぞれ標準税率の他に軽減税率、超軽減税率、食品、医薬品、書籍などの税率が定められている。多品目の商品を扱うネット物販業者にとっては、取引先国の税率課税判定を厳格に管理することが求められる仕組みとなっているようだ。

B国の輸出業者は、請求書として発行したインボイス額から、仕入れ経費のインボイス額を差し引くだけで納税額が判明する。

その納税事業者は、判明した納税額をそのまま国庫に納税をする。

国は関税地で、インボイスに記載された国名とインボイス額を記録し、その出入りを管理すればよい事となる。

ここで注意する点は国ごと、品目ごとに異なる税率を適正に、輸出業者が課税判定する作業となる。この時点で、税率に誤りがあれば、売買双方のどちらかに、自らのVAT申告の時になって、不利益と利得が発生する。ゆえに売買双方が完全に合意をする税額、税率の決定が保証される。

この方法により、VATのC効率性が高まると同時に、EU各国のVAT税率が下方に修正される可能性も出てくる。また複数税率の単一税率化は課税判定の合理化に直結する。

しかしこの方法が実現したとしても、批判の強い逆進性対策には寄与しない。仮にVATが直接税であるなら、個人個人の所得に応じた税率を設定することが可能となる。

このアイデアの方向性はまさしく未来を指向している。インボイスを電子的な情報に置き換えることが容易になった今なら、さらに工夫を重ねる事も可能だ。

例えば事業者が受け取る税額は、電子的なポイント数値でも用は足りる。最終消費者の金融機関口座から、直接国庫口座へ税額を振り替えることが可能であれば。

 

VAT行動計画:欧州委員会VAT Action Plan: European Commissionでは、もう来年2017年には「クロスボーダー取引(単一欧州VATエリア、REFITプログラムの一部)のための決定的なVATシステムの提案」が提供される予定となっている。

岩本沙弓氏の述べた「これから3年、消費税の在り方を根底から考え直す」の言葉の通り、日本でも欧州に真似をされるくらいの仕組みを作り出すことが必要です。

 

このsmarttaxnoブログ「消費税の未来・」の提案である、消費税の直接税化の意味と方法を、振り返ってお読み頂きたい。欧州委員会の方式を、さらにバージョンアップをして、消費税額を実体マネーではなく、電子的なポイント数値で交換相殺することが可能になります。

 

A 消費税(VAT)の直接税化 Direct tax of consumption tax (Value-added tax)

B 決済数値の複数化 Multiple of settlement numeric

  1、本体価格 Base price

  2,税込価格 Tax-included price

  3,支払金額 payment

C 税額をポイントで支払う Pay at the point the tax

D 納税意思を記録する To record the tax decision

E モバイルで税額情報を伝達する To transfer tax information on mobile

以上のキーワードがVAT行動計画:欧州委員会への提案となります。

Will be proposed to or more keywords is the VAT Action Plan: European Commission

Sera proposé ou plusieurs mots-clés est Plan d’action sur la TVA: la Commission européenne

http://blog.with2.net/img/banner/banner_good.gif

消費税の未来・大間のマグロは消費税を飲み込むか?

今年11月には、築地の市場は豊洲に移転をする。移転先の広々とした場内で、安全清潔に効率よく生鮮食品が,取引流通されるなら都民としても喜ばしい限りだ。

今回は、せり売りの王者「大間のマグロ」にまつわる消費税の話をしたい。

寿司屋でマグロを食べた人がマグロの最終消費者。対して津軽海峡でマグロを釣り上げた人が生産者となる。

全国漁業組合連合会の「我が国漁業の現況と消費税引上げにかかる課題」によると、小売価格の28.1%が水産物を水揚げした生産者の受け取り価格になるそうだ。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/tenken/05/shiryo03.pdf

② 小売価格に占める流通経費等の内訳(水産物、青果物) 出典:食品流通段階別価格形成調査(2010年度 )

この図表には、青果物ならば、小売価格の45.5%を生産者が受け取っていると図示されている。水産物の流通経費が割高であることを示す数字と言える。

 

前回の話に引き続き、最終消費者が支払った消費税額は、全額が国庫に納税されるわけではない事と、特例措置という法律により、かろうじて制度が保たれている事を検証する。

マグロの寿司の値段は時価であっても、ひと皿100円であっても、お客様が満足ならば申し分無しだ。レジで本体価格に消費税が掛け算で印字される場合もあれば、寿司屋の大将が、五千円、一万円と切りよく計算してくれてもよい。お客と寿司店の双方が納得して飲食代が決済されれば何の問題も無い。

いずれの場合でも、現在であれば、支払った金額には8%の消費税が含まれている。増税延期も決まったことではあるし、ここでは軽減税率の計算などという面倒な話を絡ませることなしに、今食べたばかりのマグロの消費税の行き先について述べる。

税率は10%とする。寿司店で客は税込1,100円を支払う。マグロを釣り上げた漁師の受取額は330円とする。築地のせり市で、550円で競り落とされたマグロであっても、産地出荷業者を通してせりに出品されるため、手取り額はこのような数字になるらしい。

近年は競りにかけられる魚も少ないそうだが、ここでは消費税の流れを説明するための数字として見て頂きたい。

さて、そのせりであるが、落札価格に消費税額は含まれるのだろうか。この点を説明する公式の見解が、以前にも引用した財務省のホームページに掲載されている。

財務省「適格請求書等保存方式の導入」というPDFである。

http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/keigen_03.pdf

 表紙を入れて五枚目に売上側と仕入側に分けてその特例が記載されている。このPDFの説明は、軽減税率制度が施行されてからのものであるが、右上に小さい文字で、現在の消費税法特例とほぼ同じと記載されている。

つまり、マグロを出荷する漁業者が免税事業者であっても、仕入税額控除可能とはっきりと特例が定められている。結論はせり売りのマグロの落札価格には消費税が含まれているということになる。

ならば漁師が受け取る330円には、30円分(税率が10%の場合)の消費税が含まれているという計算となる。

そしてこの漁師が年間1000万円以下の売上なら非課税、5000万円以下の売上ならみなし仕入率(第三種70%)。それ以上なら、本則課税が適用される。

ここまでの説明であれば、せり市場に出品する漁業者の売上高によって、免税、簡易課税措置はあるにせよ、しっかりと消費税額は国庫に納税されるのであるから消費税が制度として疑問ありとは言えない。

ところがである、せりによって税込価格は決定する。今後消費税率が2019年10月に上がったとする。その前日の9月30日と10月1日とで、マグロの落札価格がぴったりと2%分上昇するのであろうか。

 少し遡って消費税率が5%から8%に上昇した2014年4月にせりの価格は3%上昇したのだろうか。二つとして同じマグロなどあり得ないので検証は不可能であるが、少なくとも本則課税の漁師にとっては、せり値も税率分上がってもらわないと、利益からの持ち出しになってしまう。

築地市場から川下の流通段階であれば、消費税額転嫁の根拠となる価格もせり値によってはっきりとする。

しかし農水産生産者から見れば、自分が納税する消費税額は、農水産物が取引される市場によってのみ決まってしまう。はたしてその売り上げた農水産物価格に消費税額が本当に含まれているのかなど、全く確かめることも不可能だ。

ここで、消費税制度を説明するために作られた画像を紹介する。だれでも一度は目にした説明図だ。

消費税のしくみ|税について調べる|国税庁

 

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この図の製造業者の納付税額の部分には、納税額4000円となっている。この図の通りであるなら、先の330円のマグロを釣り上げた漁師は30円を納税しなければならない。(税率10%、本則課税として。現実には経費にかかる消費税額は控除される。)

しかも市場や地方出荷業者から受け取った330円という金額に、税額が転嫁されているかどうか一切確かめることも出来ないままに。

そのうえ軽減税率制度が施行され、インボイス適格請求書等保存方式が開始されると、漁業の仕事にかかる経費はすべて課税事業者から仕入れ、買い求めなければ、経費にかかる消費税額の控除はできなくなる。

2004年4月1日から店頭価格の総額表示が義務付けられた。そして今は税率上昇段階にあるので、経過措置として、本体価格(税抜き)表示が認められている。

そして転嫁対策特別措置法により、買い叩きや本体価格での交渉の拒否について厳しく禁止行為が定められている。それであっても、漁師たちが獲ったマグロは内税取引が強制されている。市場のせり値が外税に変わることで、漁師たちは安心して漁に出られると思うがどうであろうか。

(今気づいたが、この図の製造から小売業者の「売上げ」金額の部分には本体価格が書かれている。通常売上げといえば税込価格だと思う。この三つの事業者は外税方式の会計処理なのだろうか。この図では単に「売上げ」という部分を「本体価格」と訂正すれば良い。)

今後、軽減税率制度が現実になってしまった場合、ほぼ永遠に経過措置、特別措置、特例措置が次々に連発されるおそれがある。ひとつの嘘をついてしまうと、二十の嘘をつかなくてはならなくなるという。

ユダヤのことわざを添えてこの文を終える。

「一つの嘘は嘘である。二つの嘘も嘘である。三つの嘘は政治である」

 

消費税の未来・白タクウーバーでアベノタックスを考える

Uber Technologies,Inc.(ウーバー社)が、指向するビジネスモデルは、一般消費者が望む需要に一般庶民が応える「CtoC商取引」をインターネットを使い斡旋することのようだ。

例えば民泊。海外から来訪した旅行者に、一般家庭が宿泊場所を提供する。例えば古着のリサイクル。古本CD、中古車、一戸建ての家屋。全てのリセール財産は、インターネットオークションや独自のアプリで一般消費者から、一般消費者へ再販売する事が可能な時代となった。

もちろん民泊にしろ白タクにしろ、日本では種々の法的な規制がある。旅客を安全に移動させる、宿泊させる。これらサービスを利用する消費者の安全は最大限に守られなければならない。しかし地域的な特区制度や、利用者の安全を保証する保険加入義務が実施されたうえで、運用実行が現実となれば、ここでも消費税の本質に関わる問題点が発生する。

今回の「消費税の未来」では、消費者が消費者に対価を支払う「CtoC商取引」に、消費税を課税できるかについて考えてみる。

 

国税庁のホームページ

ホーム税について調べるタックスアンサー消費税基本的なしくみ>No.6109 事業者とは

によると「消費税は、国内において事業者が事業として対価を得て行う取引に課税されます。」

 

と書かれている。つまり一般庶民が不要な衣類を、ネットオークションで換金しても、消費税は課税されない原則となっている。

仮に今後、ウーバー社と支援企業により、この日本で白タク斡旋が可能となった場合、「商取引」にかかる消費税はどうなるのであろうか。

ウーバー社のアプリの仕組みを想像してみる。白タクの利用希望者は、ウーバー社のアプリをインストールする。クレジット決済やGPS位置情報、提供された白タクの運転者に対する好感度、などを情報としてウーバー社に送信する仕組みと思われる。

支払い決済はクレジット支払いとなる。支払先はウーバー社なので、当然に消費税は加算されている。例えば税率10%で1000円の乗車距離ならば、支払い決済は1100円となる。

ウーバー社の斡旋手数料を10%とすれば、1100円の税込乗車運賃の内、税込110円を税込手数料としてウーバー社は徴収する。そして白タク提供者には税込990円が支払われる。

なぜなら、今年の3月に可決された軽減税率の仕組みでは、インボイス制度導入後3年間は、免税事業者からの仕入れについては、仕入れ税額相当額の80%を控除することが可能となっている。

つまりインボイス制度が導入されない現在であれば、100パーセント税額を控除可能であるので、白タク提供者には税額まるまる90円を含めた支払額990円が対価として保証される。

(リバースチャージという手段もあるが、この手法については、改めて詳述したい。)

ここで結論とすることは、ウーバー社が売り上げる数◯◯億円の売上の内、かかる消費税の納税額は、ウーバー社が手にする仮に10%の手数料のさらに10%でしか無いという事実である。

仮の数字で表すならば、ウーバー社の口座に入金する税込金額が110とする。手数料は10だ。その一割の1がウーバー社が納税する消費税額となる。最終消費者が支払ったはずの10の消費税額のうち、9は免税事業者又は一般消費者ドライバーが手にする。もちろん車両整備や保険料、ガソリン代にかかる二重課税の消費税額は原価として存在する。しかし9のうち国庫に納税されるのは一部分のみ。

つまり100の売上高にかかるはずの消費税額10のうち、斡旋手数料にかかる消費税額1の部分しか、直接的には国庫に納税されることはない。

これらの話は法定外の仮想に仮想を重ねた想像上のことなので、なんとも心もとないが、「税の信義」を追い求めたら、ふと思い至ったことです。

ちなみに現在の消費税法は、BtoB,またはBtoCの関係においてのみ、徴税機会を設定していると思われる。

これからはCtoC 消費者間取引にも着目をして、課税ベースを拡大するのもひとつの案と思われる。アベノミクスも聞き飽きた。これからはアベノタックスで勝負はいかがだろうか。

決済数値の複数化がアベノタックスを支えることは間違いありません。