大竹文雄氏の「消費税が嫌われる理由」に消費税の未来を学ぶ

たまたま検索をしたら、大竹文雄氏の「消費税が嫌われる理由」というページに遭遇しました。日本経済研究センターのホームページです。

推測をすると、私のような経済、財政、税制に縁のない一般読者に、消費税の持つ特性を、わかりやすく説明をする意図で書かれた専門家の記事と思えました。

そこで私のような、商いをする消費税の納税者であり、生活者の立場で消費税を担税している庶民が、この記事を読んで、消費税に対する理解を深め、どのような感想を持つのかを、書いてみたいと思います。

原文を引用しながらその意味を探り、感想を述べます。

大竹文雄の経済脳を鍛える

2016年3月22日 消費税が嫌われる理由

直接税と間接税

 「消費税と所得税の違いは何か」と税法学者や財政学者に聞けば、「消費税は間接税で所得税は直接税」だと答えるはずだ。

その違いを一般庶民の私に問われたら、「税の負担者が支払った納税額を、課税庁に記録できるのが所得税。記録できないのが消費税」と答える。

  直接税というのは、法律上の納税義務者が最終的に税の負担者となることを予定した税だ。これに対して間接税は、法律上の納税義務者が商品やサービスの価格に税を上乗せして転嫁し、その商品やサービスの購入者が税の負担者となることを予定している。

 所得税というのは、所得税法上の納税義務者が税の負担者となる。源泉徴収制度では、その納税義務者は、納税者に該当せず、所得税法上の源泉徴収義務のある事業者が「納税義務」を負う。消費税も源泉徴収制度と同じく、消費者は納税者に該当せず、事業者が消費税の納税義務を負う。

 給与所得者を考えると、給与の支払いを受けている人が所得税の納税義務者で、その人が給与所得にかかる税金を負担しているから、所得税は直接税だということになる。

 源泉徴収制度を考えると、給与を支払っている事業者が、所得税の徴収義務者で、納税義務を負う。給与の支払を受けている人が徴収された税金額を、徴収義務者が法定調書に記載して、課税庁に提出することで、所得税法上の納税義務者と同じく、直接税の形で課税庁に所得税額が記録できる。 

 消費税の納税義務があるのは、商品やサービスを販売している側だ。しかし、消費税は価格に上乗せされているので、消費税を支払うのは、商品やサービスを購入する消費者だということになる。消費税と名前が似ている税金に支出税と呼ばれるものがある。支出税というのは、所得から貯蓄の純増分を差し引いた支出額に対して直接税として課税するものだ。直接税の場合は、税を支払う人に応じて累進的に課税することができるけれど、間接税の場合は比例税が原則になる。

 消費税の納税義務者は事業者だ。消費税額はコストとして価格の中に含まれる。ただし消費税の場合、事業者が上乗せした税額を、商品を買ってくれた人のIDとともに、法定調書に記載して、課税庁に提出することは無い。

支出税は、個々人の課税期間内の総所得、貯蓄の純増分、を公的認証記録しなければならない。課税庁がその記録を有せば、「税を支払う人に応じた累進課税が可能になる」たとえ間接税である消費税でも、個々人が支払った消費税額を公的認証記録することが可能であれば、累進消費税は実現する。 

 以上のように、消費税と所得税は、間接税と直接税で、全く異なるものだ、というのが、税の実務担当者の答えだろう。おそらく、一般の人もそう言われると納得するはずだ。

 以上のように、消費税と源泉徴収制度で事業者に徴収される所得税は、担税者から徴収をして、課税庁へ納税されるまで、手続き上では、全く同じ性格を持っている。というのが、知識のない一納税者の実感です。おそらく税の専門家もそう言われると納得していただけるでしょうか。

経済学者の理解

 経済学者は、所得税と消費税について一般とは異なる理解をしている。日本の所得税は確かに累進的になっているが、税率は既にかなりフラット化されている。多くの人は少し所得が増えても、直面する税率そのものは変わらないだろう。特に、住民税なら定率の10%になっている。そうであれば、追加的に得られる所得に対してかかってくる直接税と追加的に支払わねばならない消費税では、支払う側にとっては、どちらも同じような負担になるはずだ。その意味で、フラットな税率の所得税と消費税の間には、実質的な差がないと多くの経済学者は考えているのだ。

先進的経済学者の理解

 先進的経済学者は、所得税と消費税について一般とは異なる理解をしている。日本の所得税は確かに累進的になっているが、実質税率は既にかなりフラット化されている。控除額があるため、少し所得が増えても、適用される実質税率そのものは変わらないだろう。実質税率とは、基礎、扶養、配偶者、保険料、医療費などの所得控除を収入から差し引き、さらに控除額を差し引いた、課税所得金額に対する税率を言います。

例えば課税所得金額が200万円の場合、名目税率は10%ですが、課税所得金額に対する実質税率は約5%です。

ここで大竹文雄氏の超先進的な試みがなされる。所得税を消費税目で徴収する。または消費税を所得税目で徴収する。どちらが一般に好まれるかという課題だ。

仮に収入が400万円で所得控除が150万円であれば、課税所得金額は250万円となる。所得税額が仮に20万円であれば、実質税率は5%になる。

収入が400万円の所得階層の、消費税課税支出が、半分の200万円と仮定するなら、年間の消費税額は、8%で16万円になる。所得税額と合計して、36万円。実質税率が9%になるような、名目税率を初めから設定すれば良いことになる。

逆に消費税目に所得税を合体させるなら、消費税率は18%になる。(36割る200)

しかしこのような計算を、各所得階層と個々人の生活環境の違いによる消費率の違いによる試算を繰り返す事は、このブログではできません。

少なくとも、大竹文雄氏の超先進的な試みは、消費税の未来のさらに未来に新しい地平をひらくものと思えます。その第一段階は、個々人の消費税課税消費額を、公的認証記録する事となります。そのためにも「納税意思額」を決済の度ごとに、記録するICTを利用したシステムの実現が必要となってきます。

大竹文雄氏の原文の後段で、

消費税率が8%の場合、約7.4%の定率の所得税と等しい税負担になる。

とあるのは、累進消費税率が実現した場合の、中央所得額、中央消費率に該当する個人に適用される基準消費税率でもあることを、お知らせしておきます。計算式は、

108 割る 8 イコール 7.4074% です。

10%の場合なら、10 割る 110 イコール 9.0909% です。

消費税の未来・消費税積立貯蓄制度「消費税マイレージ」と財務省

「消費税マイレージ」とは、日本のこころを大切にする党の中野正志氏が、2016年3月29日の参議院予算委員会で提案した政策です。同党ホームページには、4月3日の河北新報国会短信記事で紹介された記事が掲載されています。

記事の概要は(上智大学の大和田滝惠)教授の案を基にした政策で、「納めた消費税の一部を政府が積み立て、年金受給時に受け取れる」というものです。安倍晋三首相から「消費を活性化するための建設的な提案だ。事務方に勉強させたい」と前向きな答弁を引き出した。と河北新報国会短信で伝えています。

私がこの大和田氏の提案を知ったのは、中野正志氏が国会で質疑した数日後、参議院インターネット中継を見た時が初めてでした。大和田滝惠教授は、2003年の上智大学の大学紀要ソフィア誌に

「ヴィジブルな社会」への経済政策--「消費税積み立て還付制」が実現する驚異的効果

を発表しています。またフジサンケイビジネスアイなどにも「消費税積み立て還付制」についての論文記事を掲載しています。

私はこれら多数の著作をまだ読んでいませんが、「消費税の未来」に大きな方向性をあたえるものと感じています。

また、カードを使って課税消費税額、非課税消費額の記録をおこない、電子政府により管理する手法は、昨年のマイナンバーカードを使った消費税の還付案に、ほぼ共通する手法と考え方と思われます。昨年の財務省案は、大和田滝惠氏の考案を十分に研究をしたうえで発表がなされたと、私一人の推測で言いたいと思います。

しかし今後10年、20年のさらに進んだ技術社会では、個々人の消費をした金額を、適格に記録する環境が整います。その時には、大和田氏の考える「消費税の累進課税化」は必ず実現がなされると、思わざるを得ません。すでに「納税意思」を記録する方法は、このブログでも紹介してあります。

同時に、現在日常生活で買い物をする時の代金決済は、多くが現金です。20年後の未来でも現金が無くなることは無いと思います。消費額の公的認証記録には、二つの壁があります。ひとつは巨大な「ATMシステムの壁」、もう一つは「現金の壁」です。

もちろんそのどちらとも、チェーンブロック、ビットコインフィンテックが解決してしまう事は想像できます。ただ「現金」だけは、今後50年100年ではけっして無くならないのは確かです。

 

 

消費税の未来・軽減税率は自由、民主、共生の精神を「ないがしろ」にする

たまたま、中小企業家同友会のホームページを見かけた。中小企業家同友会とは、昭和22年に中小企業の存立と発展、社会的地位の向上を目的として結成された全中協(全日本中小企業協議会)から発展した、全国規模の協議体です。

私には全く関わりのない団体ですが、「人間尊重の経営」という理念が、消費社会の一側面をあらわす文章に使える気がして、部分的に改変して書きなおしてみました。

中小企業家同友会は「自主・民主・連帯」の精神を「人間尊重の経営」の考え方の基本と唱えています。アンダーラインが改変した部分です。

かけがえのない消費生活を保証するー消費者の尊厳(自主、自由

消費者は何を買うのも自由です。買った商品をどのように消費するかも自由です。消費する喜びも皆違います。同時に、誰もが無限の消費意欲を持ち、消費への挑戦を自主的、主体的に継続できる環境の保障が大切です。人間が働くことを通じて自分の成長を見出し、働きがい、生きがいを実感できる税制こそ人間の自主性が発揮され、個人の尊厳(自主)が尊重される税社会といえましょう。

(食べ物を買えば軽減税率、携帯ゲームにお金を使えば贅沢な娯楽だ、という上からの決め付けは自由な消費行動を阻害する。)

いきること、平等な人間観と価値観が民主主義の根幹ー財産の尊厳(民主)

消費者が生きていくためには、最低限の生活保障が必要です。社会で働くことは、本人及び家族の生活を維持、安定させることが大前提です。国家としては、生活を守り、賃金を保障する、公平公正平等納税環境を整備することが法的にも義務付けられています。

「人間一人ひとりが持つお金の価値観は皆違う」といわれますが、これは人類が長い年月をかけて確立した財産の尊厳を守るという人間尊重の価値観であり、そこから平等な人間観が育まれ、民主主義の原点を形成してきたといえるでしょう

(高所得者の千円と低所得者の千円と、価値観は違うかもしれません。しかし買える品物は同じ市場価値を持っています。だからこそ、税の負担率に逆進性のある消費税は、平等な人間観を破壊します。しかも軽減税率は高所得者の軽減額を増大させます。)

あてにし、あてにされる関係を生み出すー人間の社会性(連帯、共生

消費者は孤立して生きることはできません。消費者がより人間らしく生きていくためには、相互に信頼し、「あてにし、あてにされる関係」を尊重することが大切です。このことで、お互いに手を携えあって社会を築いていくという、人間の社会性が高まり、ほんものの連帯をあらゆる消費経済社会の中でつくっていくことができます。

 経済社会では、国と納税者間はもとより、事業者間の取引仲間と信頼しあい、共に育ちあう関係が育まれることによって、お客様や地域社会からの信頼を高めることができます。

(益税という小規模事業者へのあらぬ疑い、みなし仕入率という、計量税額ではない推計税額による徴税。小規模事業者は転嫁できないと言い、消費者は内税でしょと言う。税を転嫁する仕組みの無い「消費税法」によって破壊されてしまうものが、消費者と事業者間の信頼、連帯、共生の精神ではないでしょうか。)

 

引用した原文は

用語集(人間尊重の経営):同友会紹介:中同協(中小企業家同友会全国協議会)

消費税の未来・インボイスの意味を城郭都市と城下町にたとえてみました

消費税と付加価値税の違いを、日本の城下町と西洋の城郭都市に例えて考えてみた。

私は歴史や文化に通じていませんが、直感的なイメージで、この二つの税制度を喩え話で書いてみます。企業、会社、商店など消費税を納税する事業体を、城下町や城郭都市と見立ててください。消費税なら城下町。付加価値税なら城郭都市と呼んでみます。

城郭都市の場合、城門が備わっています。その城門をくぐって出来上がった商品が売られていきます。原材料や仕入れた商品も、その城門をくぐって城郭都市に入ります。城門の門番は、荷物が出入りする度毎に、書類を提出させます。その書類がインボイスです。書類には連続番号と発行した城郭都市の紋章も記載されています。非課税取引の書類には税額はゼロとなっています。

城主に毎日その書類を持って報告するのが門番の仕事です。城主は積み上がった売買差額の金貨の額と、インボイスに記載された税率と税額を確認します。品目によって税率が異なるのが厄介ですが、城から出て行った税額から城の中へ入った品物の税額を差し引くことで、簡単に国王(国税庁)へ奉納する税額を計算できます。

少し説明に無理はあるかと思いますが、あくまでもこの城郭都市が、ひとつの企業であると考えて下さい。

それでは日本の城下町、消費税ではどうなるのか

平野にある城下町、河に挟まれた城下町、いろいろあるとは思います。大抵幾つかの街道が城下町に集まって走っています。その中心に石垣に囲まれた天守閣がそびえています。城下町の領民は商品を売ったり買ったりして暮らします。

取引ごとに請求書や領収書は発行しますが、税額を記入する決まりはありません。年に一度、城主の元に集まった貨幣、つまりはこの城下町の売買差益を前に、領民が全員集められます。城主(企業)が国王(国税庁)に奉納する税額を計算するためです。

さてここからが一仕事です。消費税率は単一税率の8パーセントです。集まったお金の8パーセントが単純に奉納税額ならば計算は簡単です。ところが領民それぞれに家庭の事情があります。まずこの城下町の一年間の総売上高と総仕入高を請求書や領収書で計算します。その差引額が目の前の貨幣の額です。

そして城主は領民にこう問いかけます。「今年の一年で子供の生まれた者、葬式を出した者、勉学に金がかかった者、医者にかかった者、借金を返した額、南蛮人の船に載せた商品の額などなど、消費税のかからない取引をした全ての金額の、支払った金額、受け取った金額を、書付をもって提出しなさい」

こうして非課税取引の授受金額を明らかになったら、総売上高と総仕入高からそれぞれ差し引きます。結果算出された金額が、課税取引によって得た城下町全体の利益です。あとは8パーセントを掛け算するだけで、いくつもの城下町を支配する総国王(国税庁)に支払う消費税額が決まります。

かなりこじつけ的ですが、この例え話の城郭都市、城下町をひとつの企業と考えてイメージしてください。さらに城下町の喩え話を続けます。

総国王は城下町の規模の大小によって、計算方法の省略を認めています。規模の小さな城下町の仕入れ率を、商業町なら8割か9割、農産の町なら7割、飲食の町なら6割、船運伝馬の町なら5割といったように。それぞれ総売上高をごまかさなければ、簡単な方法で、納税額は計算できます。たとえ実際の授受税額と違っていても、総国主からお咎めはありません。また売上額がとても少なければ課税が免除される場合もあります。

同じく城郭都市の場合も規模がとても小さいと、課税は免除されています。しかし他の城郭都市へ商品を売る場合、税額や都市の紋章をインボイスに記載できないきまりがあります。この小さな都市の商品を買っても税額を支払ったという証明書が無いため、他の都市から取引を除外されてしまう事になります。なので売上額が小さくてもインボイスを発行する世間並みの城郭都市になろうとします。

こんなふうに消費税と付加価値税の違うところを例えてみましたが、同じことを以下に書き直しました。私の言いたいことを汲みとっていただければ、考えた甲斐があります。

まとめてみました

付加価値税と消費税は、異なる計算方法によって税額が決定される。税額票(インボイス)の有無がその根幹だ。欧州では取引者間で交わされる請求書、領収書に記された税額の収支により納税額が決まる。ところが、消費税では帳簿上の税務会計のみで納税額が計算される。

決定的に異なるのは、付加価値税が個々の取引の税額を加算、積算するのに対して、消費税は内税記帳でも外税記帳でも、帳簿上の合計数値から税額を割り出す点にある。そのためには損益計算書、貸借対照表の勘定科目に沿った項目ごとに個々の取引の課税、非課税、免税、不課税を判定する必要がある。

入るお金、出るお金、お金にバーコードや税額区分明細はついていない。日本の消費税制度の会計業務では、事業者が行う日常取引について、消費税納税額を計算するために、法令、通達に基づいた課税区分を会計業務の中でおこなっている。

しかしその日本の消費税制度であっても、個々の取引の請求書を発行する段階では、しっかりと本体価格、税額、税込価格は売買双方の合意のもとに決定されている。つまり売買代金を決済する段階では、消費税額は相互監視のもとに正確に授受されている。

ただ日本の消費税制度の場合は、単一税率のために、課税品目の総合計売上高さえ判明すれば、自然と税額も判明する。一見簡単で便利な方法ではあるが、売上高、仕入高、販売費、一般管理費などの中に非課税などが含まれるため、その部分を差し引いて納税額を算出しなければならない事態となっている。(95パーセントルールという経過措置もある)

その点欧州付加価値税制度は、インボイス税額票によって授受した税額を、引き算で計算すれば、簡単に納税額は判明する。

ところが、この双方の制度には、課税回避の方法が組み込まれている。欧州の場合では税額票の偽造や架空計上、日本では売上高の除外など。いずれにしても本来の税制度の原則から外れてしまう方法だ。

実際の消費税納税額の計算方法は、売上高により非課税事業者、簡易課税事業者があり、本則課税事業者以外は「みなし」という方法で、はるかに簡単な計算方法(個々の取引の税額を計算せずに、単純に利益率を業種業態ごとに決めてしまう)がとられている。また課税期間の納税額も、前年度の消費税申告額に応じた予定納税がなされ、会計年度終了後の消費税申告によって、追加納税や還付がおこなわれる。

以上のとおり請求書等保存方式は、税務会計によりすべての決済で授受された取引金額を、課税非課税に分類区分する必要がある。しかし年間売上高5000万円以下の事業者は簡易課税が用意されており、納税事務の簡素化が図られている。それでも帳簿上の課税可否判定の作業は必要となる。

本則課税で消費税額を計算する事業者は、複数税率になった場合、非課税の外堀を埋めて、さらに本丸の標準税率と二の丸の軽減税率の天守の高さを明らかにする作業に没頭することになるのだろう。貴重な人的資源の浪費でも、掘っては埋める公共事業と言えないこともない。

インボイスに記入される税額情報などは、実際に銀行決済される場面で、取引者双方の間ですでに明らかになっている。その数字を直接、記録計算するのがインボイス制度。どう考えても日本式消費税制度、日本式軽減税率の制度は回りくどい方法だと思う。

先の喩え話の場合、ただひとつ、日本の城下町の城主にとって、利するところがある点は、領民それぞれが支払った非課税取引の額を知ることができたところにある。この情報数値は城下町を治め、領民の福利厚生額を知り、人心掌握をするために大きな助けになるだろう。

 

 

消費税の未来・今後五年間、税率アップは無いというたった1つの理由

何事も自分に都合よく解釈をしてしまうのは、よくあることだ。単に私の希望的観測で語りたい。

来年の平成29年4月、仮に消費税率が増税されなければ、これで二度目の増税延期となる。ここで思い出したのは、「二度あることは三度ある」ということわざだ。「三度目の正直」というのが、財務省の願いだということはわかっている。

昨年平成27年の9月、マイナンバーカードを使った税額還付の方法が、財務省から出された時点で、勝負はあったと思って良い。この勝負とは、国民と財務省との勝負である。財務省が切ったカードは、到底実現できないシステムであった。迎え撃つ国民側は、手持ちのカードにそれ以上強いカードは必要なかった。同レベルの実現できない「軽減税率」というカードを切ればそれで勝負は決まる。

「消費税の逆進性」という、国民と財務省、共通の敵に対して、お互い切るべきカードは持っていなかったのだ。逆進性が解消されないまま、税率をアップさせることは、国民も政治家も許さない。結果現状の税率は維持される。この先も財務省が「完璧な軽減税率制度」たとえば付加価値税先進国の欧州諸国がまねをするくらいの制度を考案しないかぎり、税率をアップすることは不可能となる。

しかし「怪我の功名」ということわざもある。狼が来るぞ来るぞと脅しておいて、増税は先送りと打ち上げれば、春の陽気と一緒に、お金を使ってみたくなる。なんとなく世の中景気がいいね!と気分も和やかになれば、税収が増えることもあり得なくもない。

ところが、現状8パーセントの税率ならば、すでに所得階層の高低によって、逆進性の牙は容赦なく低所得者の財布をむさぼっている。やはり陽気に浮かれている場合ではない。増税延期の話は、経済的、政治的判断で語られることが多すぎる。問題を真に解決するには、昨年9月の財務省のアイデアのように、数字的に低所得者の税負担を減らす方策を、税構造システムの枠組みの中で考えなければならない。

そこには国民経済的な判断や、政治的思惑は必要ない。

よく使われる言葉に「消費税の所得に対する負担率」というものがある。本当の公平とは何かと問われれば、その負担率が所得に対して同じ数字になるべきと答えられる。

例えば年収1000万の人の消費税負担率が8パーセントで、負担額が80万円であるならば、年収100万円の人の消費税負担額は8万円となる。この数字であれば逆進性があるとは言えないだろう。

現実には年収1000万円の人は、貯蓄をする余裕があるので、消費率は50パーセントかもしれない。となると、上記の例では実際に支払う消費税額は、40万円、負担率は4パーセントになってしまう。

簡単な公式ならば

負担率 割る 消費率 イコール 税率 となる。

8 割る 50 イコール 16パーセント

この16パーセントこそが、年収1000万円の人の消費にかかる消費税率でなければならない。 と思う。

負担率、所得額、消費率、消費税率、という要素を表に表すと、三次元の消費税率の税率表が出来上がる。

次に財務省が切るカードは、この三次元税率表であってもらいたい。

そして消費額を計る方法は、前前前回に私が書いたブログ「納税意思を数値化する」に示してあります。

かなうことならば、「増税は忘れた頃にやってくる」であってほしいものです。

消費税の未来・竹下登首相の6つの懸念。増税をはばむ3つの理由

消費税導入時の竹下首相が示した6つの懸念とは、1,逆進性 2,中堅所得者の税の不公平感 3,所得者のかからない人たちに過重な負担 4,税率引き上げが容易 5、事業者の事務負担 6,物価上昇インフレ だという。

6のインフレについては杞憂で済んだ。税率が上昇するに伴って、際立つ問題点は逆進性となる。この逆進性に対する対応策が、「軽減税率」の導入と決められた。他にも「給付付き税額控除」という案があるが、所得と資産の把握の点でその実現性は遠のいている。

しかし実際に「軽減税率」を導入するには、事業者の事務処理、現場決済処理など、いくつもの難題がある。しかも双日総合研究所吉崎達彦氏の溜池通信486号に提示されている、平成版6つの懸念など、消費税が経済活動自体に及ぼす影響も見過ごせない。今日(2016年3月)の時点で本当に、来年四月に「軽減税率」が実行されるか、税率が上昇するのかは、混沌としている。

ここにきて増税延期の3つの理由が報じられている。

1,三人の経済学者が参加した国際金融経済会合で、言外に示した増税延期の方向性

2,軽減税率を実際に導入した場合の、事業者の事務負担と社会的混乱の可能性

3,今現在でさえ、消費意欲が乏しい上に、増税がなされたら更なる消費の落ち込みの可能性

ここまで増税懸念が明らかならば、いっそのことサミット前に安倍首相自らの信念として増税延期を打ち出すのが、安倍さんらしい。多分野田前首相以外は賛同すると思います。

ここで話題を変えて、「平和の俳句」について一言述べたい。

平和の句とは、東京新聞中日新聞が募集している、朝刊一面に掲載される一日一句です。いとうせいこう氏と金子兜太氏が選者となっている。今年の三月六日付の句に選ばれたのがこの句です。

「日の丸は 戦うための 旗でない」   石川県七尾市 奥井淑子 91歳

どのような思いを込めて作られたのか、読む人によって感じ方も一つだけでは無いのだろう。

そこで私も、この句を真似て 俳句にはならない句を作ってみた。

消費税 貧富をひらく 税でない

自分自身で解説をしてしまうと

本来なら税は社会負担の分配の機能を果たす。そこには富の再分配の意味もある。応能負担の原則もある。しかし税そのものが弱肉強食の理論に則ってしまったら、はたしてそれは税と言えるのか?

ならば消費税そのものが、個人個人の能力に応じた負担を求める仕組みでなければならない。所得税との相互作用でバランスを取るのが消費税であるならば、過去0から3,3から5、この税率上昇期に所得税の累進度は軽減されている。逆の現実がそこにはある。

仮に前々回のブログ「消費税を直接税にする話」のように、最終消費者が直接国庫に消費税を納税する仕組みが実現できれば、消費税は格差を拡げる「税」ではなくなる。

日の丸の旗でさえ、国際間の競技でも、無くてはならない象徴です。しかしかつては世界の三大大国と戦った無謀な国のシンボルとなっていました。

91歳の歴史を目の当たりにした婦人が、問いかけようとしているその気持を、さまざまな視点から読み解きたい。  

 

 

消費税の未来・軽減税率6%標準税率8%そして割増税率10%これが増税延期後の消費税率か?

そろそろ消費税の明日が見えてきた。だけれども消費税のあさってはどうなる?

必ずしも読売新聞の記者の言うとおりになるかどうかは、誰にもわからない。来年四月以降も、仮に消費税率を今のまま据え置くとしたら、今年の秋の臨時国会で法改正がなされるという。現在参議院で審議中の「閣法 第190回国会 16 所得税法等の一部を改正する法律案」の(消費税法の一部改正)の実施時期が後ろにずれていくのだろう。

ほとんどが零細事業者である食品小売業者にとって、準備期間の猶予が与えられるわけで、喜ばしいことではある。ならば、この猶予期間に、もう一段階の新しい施策を考えてみたらどうだろうか。

現在の標準税率は8パーセント。改正法案では標準税率が10パーセントとなる。軽減税率との差は2パーセントである。消費税法が27年前に施行されて以来、消費意欲が失われたままであるのは、やはり消費税が原因と言われてもよい。

消費税は国の基幹税に成長し、今さらやめるわけにもいかない。もう複数税率を導入すると決めてしまったのならば、次の一手は「軽減税率」と「割増税率」を一緒に導入することだ。

ご存知の通り欧州には「割増税率」は無い。あるのは超軽減税率と中間税率だ。それもいずれは廃止される過渡的な移行期の税率とされている。インボイスを導入しないままに、ヨーロッパ付加価値税の猿真似をする税構造を作り上げる日本なら、独自の「割増税率」が実現してもおかしくはない。数年後には、適格請求書という仕組みを使うらしいので、できないことは無いだろう。

さてその対象品目となると、思いつくのは富裕層が楽しむもの。リッチな時間を過ごせるもの。日常の衣食住に関係しないもの。遊戯的なおたのしみ。かつての物品税を思い出してしまうが、外食、持ち帰り論議のように、曖昧な点のないはっきりとした区分の見極められる品目が想像できる。

ここで私が想像する消費税のあさっては、「割増税率」10パーセント。「標準税率」8パーセント。「軽減税率」6パーセント。である。意味するところは、消費税収入の現状維持。つまり増税先送りと同様だ。海外から招いたノーベル賞学者のご意見にもそむくことはない。せっかく軽減税率の仕組みを盛り込んだ改正案を作ってしまったのだから、早速使わないのももったいない。その仕組を十分に利用して、庶民の懐にやさしい6パーセントの本当の軽減税率で働く意欲を養ってゆきたい。

そしてある程度豊かなお客様を相手にする業種の方にはお手数だが、軽減税率の仕組みを裏返した「割増税率」をお客様に転嫁請求していただく。その業種の方が仕入れる時の税額は、標準税率のままとなる。あるいは割増税率のものもあるだろう。この仕組は中小飲食店、食品小売店にも適用される仕組みなので、まさか対応できないという話も無いと思いたい。

ここまで想像すると、ますますインボイスの無い付加価値税など税制度としてあり得ないと思うがどうでしょうか?。前回の私の書いたブログ「本体価格、税込価格、そして実際に支払った金額。この三つの数値が意味するものとは?」の未来すぎる話は別として、もう明日あさっての現実を選択するときが来ています。

2016/04/06にタイトル変更しました

2016/03/23の公開時のタイトルは、「そろそろ消費税の明日が見えてきた。だけれども消費税のあさってはどうなる?」でした