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消費税の未来・アナザーワールドへようこそ

国税庁では税について分かりやすく紹介した動画を多数公開しています。そのひとつが「アナザーワールド」です。もし日本の未来で税が無くなったら、こんな悲惨な社会になってしまうと物語っている16分間の動画です。

66年前の日本の税制度も、今の私たちから見ればアナザーワールド」に違いはありません。しかしそこには現在でも解決されない共通した問題点と、劇的に戦後を切り開いてゆく改革への意欲が感じられます。

数ページの薄っぺらな冊子ではありますが、昭和25年への時空旅行を体験してください。

国税庁が設置されたのは1949年(昭和24年)6月。初代の国税庁長官は高橋衛氏です。1952年(昭和27年)12月まで在任をしています。

租税制度を執行する機関として、発足当初より「租税教育」など、税の広報活動をおこなっています。現在パソコンで手軽に見られる動画などもその一環です。

今回ご紹介するのは、昭和25年1月頃に刊行された小冊子です。タイトルは「国の台所読本 №1 青色申告制度の生まれるまで」 国税庁広報課監修 となっています。

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表紙1 昭和24年の思い切り笑っている生徒たちの表情が表紙に使われています。

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表紙2、1P 太平洋戦争の損害が書かれています。日本人だけで328万3000人の軍人と銃後の国民が、死亡負傷行方不明となっています。物質的被害は昭和23年の価格に換算して6兆8700億円。臨時軍事費が12兆6500億円と書かれています。臨時軍事費というタンクが国民を押しつぶしている挿絵が書かれています。

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2P 終戦直後といえばヤミ屋の暗躍。写真には土中に隠したり、菰に包んだ隠匿物資を摘発する経済警察の活躍が写されています。女性と戯れ酒盃を上げる姿が本当にヤミ屋の宴席であるかどうかはわからない。現在ならば写真はイメージですということか。

3P グラフの小さな字は、昭和21年1月を1とすれば、昭和24年1月には、銀行券発行高は5.91倍、東京卸売物価は114.2倍になったと書かれている。

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4P 国会の壇上に立つのは第三次吉田内閣で一年生衆議院議員ながら、大蔵大臣に任命された池田勇人。グラフには昭和21年の税負担率が10%、昭和24年の税負担率が26.4%に増加した数字が示されています。

5P 挿絵の漫画は荒波に揉まれる船に乗った国民が必死に納税というオールを漕いでいます。一人の国民は同じ船に乗りながら納税をせずに煙草をふかしています。本文では「申告納税制度」「納税者の良心と義務意識」「公平負担の原理」などが語られています。

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6P このページにも池田勇人蔵相の写真が使われています。ジョセフ・ドッジ公使は1945年からドイツの金融政策顧問に赴任し、破綻銀行再建、ライヒスマルクの削減、新ドイツマルクの発行などの政策を成功させてきました。昭和24年の超均衡予算はドッジと占領軍の権威により組替えられたようです。

7P 昭和24年の5月にシャウプの税制使節団が来日しました。シャウプ税制の精神として、安定、公平、簡単、公正が挙げられています。そして国税庁自ら「終戦後の混乱した税制、国民が税務行政の重圧に喘いでいる」と書いています。

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8P 昭和22年には申告納税制度が始まっています。本文に書かれているようにこの時代には、税務署が実態調査もせずに腰だめで更正決定をおこなっていたことがわかります。そしてこの冊子の趣旨である青色申告制度の理解と普及によって「昔日の光輝」を取り戻すと結んでいます。

表3 現在も毎週月曜日に刊行されている「税のしるべ」の広告です。大蔵財務協会のホームページには2015年9月現在で発行部数は9万部と書かれています。

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裏表紙 年齢は中学生くらいでしょうか。この冊子の配布対象と思われます。この少年たちの十才前後年上の男子が最も多く戦争の犠牲になっています。数年後にはこの生徒たちも社会に飛び立ち、それぞれ源泉徴収所得税を支払う会社員、申告納税制度で所得税を支払う事業者またはその従業員となってゆきます。そして今は80才過ぎのお年寄りです。写真で二度も登場した池田勇人蔵相は、11年後の1960年に内閣総理大臣に就任しています。

1946年にアメリカ合衆国から派遣された「アメリカ教育使節団報告書」と同様に、「シャウプ使節団日本税制報告書」も日本の戦後税制度に多大な影響をもたらしたと言われています。文部省の例にならって大蔵省も戦勝国を利用した改革をおこなったとも言えます。いずれにしても新たな国家をつくる熱意に満ちていたことは大いにうかがえます。