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消費税の未来・平田敬一郎著「税金の基礎知識」が語る60年前の税の常識

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昭和29年のことです。46歳になる現役の国税庁長官が一冊の本を著しました。タイトルは「税金の基礎知識」。昭和27年に第二代目の国税庁長官に就任した平田敬一郎氏は、昭和30年7月まで在任し、続けて大蔵事務次官職を昭和32年5月まで務めています。

税の専門家である著者と、一般市民を想定した弁護士との自問自答の会話形式で全編が綴られています。その目次を見るだけで、親しみやすさが伝わる好著と思えます。

税を徴収する国税庁のトップが、一般の国民向けに、税務に携わる現場に向けて、あるいは制度を設計する政治家や官僚に対して、わかりやすく丁寧で、率直な言葉を用いて一つひとつ、決して庶民感情を忘れること無く語りかけています。

高度成長に飛び立つ頃の日本の税の常識や、理想と現実、そして課税庁トップが知っている信頼性のある数値が、全編に網羅された355ページの著作です。

 その「はしがき」と目次の一部を、ここに書き写してみます。

   はしがき

 納税者の身になって、仕事のやり方に反省と改善を加え、重い税金が少しでもらくに、そうして、どこどこまでも納得づくで納められるように努めて見たい。

 税金は誰にだっていやなものに違いない。しかし、いやだと言っても、自分たちの政府が有り、自分たちの自治体がある以上、応分の税金の負担はこれまた避けられるものではない。いやだと思って頬かむりしていたんでは、民主国家の国民としてどうかと思われるだけでなく、却って損をする場合がないとも言えない。どうしてこんなに税金が重いのか、ということから国政や市町村政などに対する真剣な批判と考え方が生まれてくる。また、税金の知識をつかむことによって、合理的に軽くたやすく納められる途も開けて来る。いやなものは放って置けということはどうかと思う。

 私は納税者の納得をうる最良の途は、税金に関する苦情つまり不平不満の声に、虚心坦懐な気持ちで、耳を傾けることから始まると思っている。そうして実際もそのことに務めて来た。数多くの苦情の中で、一般的と思われるような問題をここに拾いあげて、答えて見ることにした。できるだけ軽い気持ちで読んでもらいたいので、なるべくザックバランにやることに心掛けた積りである。

 税金のことは専門的でわかりにくいというのが、世間の定評のようであるが、私はかねがね、本当の専門的な知識は本当の常識に通ずるものだと思っている。先般短い時間であったが、徳川無声さんと対談する機会を得て、特にこのことを感じた。本書が、税金に関する常識の普及に、そして納税者と国家公共の双方に少しでも役立ちうるならば甚だしあわせである。

 なお、本書が生まれるについては、出版社の野村、高岡の両氏に大変お世話になった。そのことをしるして感謝の意を表したいと思う。

 昭和29年3月

  吉祥寺の寓居にて 著者しるす

目次

第一部 こんな重税ひどいじゃないか

第二部 税金の昔と今

第三部 税金今昔つかい方

第四部 直接税か間接税か

第五部 減税に偽りはなかったか

第六部 シャウプ税制逐次大修正

第七部 納税はどこまでも納得づくで

第八部 課税の公平

第九部 納税者の人権擁護

第十部 査察と差押公売

第十一部 わかりにくい税法と申告書

第十二部 徴税能率の改善

第十三部 今年の税制はどう改正されるか

「平田敬一郎 税金の基礎知識 財務出版株式会社 昭和29年5月25日 再版発行」 より

 

この目次の各部には、それぞれ数篇の細目タイトルが付けられており、例えば第二部には「鶏三羽に税金かけるせち辛さ」というのもあります。

また廃止された取引高税や、今後の間接税の在り方、当時の欧米の税制度の分析などについての記述もあります。

そしてシャウプ勧告では、地方税としての事業税に付加価値税が検討されていたこともわかります。この付加価値税とは、営業者への直接税であり、課税標準を総売上高から特定の支出額を控除した金額とされていました。

しかし実際には昭和29年の地方税法の改正により、未施行のまま廃止されています。

消費税制度の未来が定まらない現在、過去をひもといてみる事もアリかなと思います。