消費税の未来・MMT現代貨幣理論 (Modern Monetary Theory)を理解する前に気づいておいて欲しい事

 ごくごく簡単な話です。今日本では消費税制度が導入されています。制度上、全ての商品を買うときに消費税が課税されています。もちろん非課税、不課税、の財やサービスを購入する場合には、消費税は課税されていません。英国では食料品がゼロ税率となっていますが、日本にはゼロ税率という商品はありません。

 ということは、私たちが財布に入れて持っている現金には、いつでも常に「税金が含まれている」ということです。ただ病院に行ったり、検定済教科書を購入する場合には消費税は課税されません。同じお金でも税が含まれていたり、含まれていなかったり、不思議なものです。

 計算がわかりやすいように現在の消費税率を10%と仮定します。いまATMから110円を引き出すとします。手数料がかからないように日中の時間帯としましょう。すると手にした110円のうち、10円は税金だということです。非課税商品の検定済教科書の本体価格が100円としても、10円は手のひらに残ります。当たり前すぎる話です。

 しかし日常の消費生活をおこなっていれば、財布の中に11,000円があれば、1,000円分は国に納める税金だということが実感できると思います。お金には原則的に税金が含まれている。特に日本の消費税のような「流通税」は、どのくらいの割合で税金が含まれているか実感しやすいものになっています。

 MMT(Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)がにわかに米国でニュースになっています。日本では「現代金融理論」とも訳されています。財政が赤字であるからこそ、非政府部門、民間部門が黒字を蓄積することができるという理論です。デフォルト・債務不履行は、限られた条件を有する国であれば起こりえないとされていますが、多くの有力な経済学者から「説得力のある議論がなされていない」と批判されています。

 心配される点は、MMT論者と主流のケインズ経済学者との論点が、異なる次元にあるように見える事です。例えばMMTでは公共と民間部門との間の取引を、「垂直的取引」として分類しています。そして民間部門間のすべての取引を「水平的取引」と位置づけます。もしかしたら主流の経済学者は納税者と政府との間の取引(納税・分配関係)も、「水平的取引」と意識しているようにも感じられます。

 いずれにしても、米国や日本のような恵まれたポジションの国家だからこそ、このような夢のある理論が話題になるのだと思います。私としては、MMTT(Modern Monetary Transaction Theory)と名称を変更し、「水平的取引」決済に使われる数値を三つに増やし、本体価格、税込価格、実際に取引相手に支払われる金額(税額を支払うべき当事者が、自分か取引相手か、どちらにするかを意思表示した数値)を使うことを提案したいと思っています。このMMTTが「MMTイデア」の到達点だと考えます。

 今後の論戦は、日本の消費税制度自体にも多くの示唆と方向性を与える可能性があります。注意深く理解をしてゆきたいと思います。