消費税の未来・初夢で見た今年の10月1日午前0時、おでんのタネも税率は4種類!?

 寝床から起きたばかりで、新春に見た夢を書き留めてみた。切れ切れの記憶をつなぎ合わせて書いてはみたものの、つじつまが合わなっかったり、どこか大事なストーリーが抜け落ちて、夢の中での出来事がうまくご紹介できないとは思う。大目に見ていただきたい。

 場所は六本木のコンビニで

 消費税率が8%から10%に上がる10月1日午前0時の少し前、私はそのコンビニに立ち寄った。ここは今から30年の昔、大蔵省の主税局長ら数名の官僚が、消費税導入施行の瞬間を見届けたコンビニだ。そして今、同じく財務省の官僚3名が、その瞬間を目の前で確かめようとレジのそばで、たむろをしている。どういう訳かカメラマンもそこに待機している。

 時刻は午前0時をまわった。レジでは消費税増税後はじめての客が、おにぎりとカップ麺の会計をしている。もちろん支払いはスマホで読みとるQRコード決済だ。携帯画面には商品合計額が表示されている。報道の記者風の男はコンビニ店員がこのように客に問いかけた事も見逃さない。「お持ち帰りですか。」客はこう言った。「はいそうです。」

 レジの店員さんはそこで初めて軽減税率選択ボタンをタッチした。スマホの画面には、見事に税率8%表示が現れた。さらに還元ポイント額5%分の表示もされている。客はカメラマンにスマホの画面とレシートを撮影させると、「ポイント還元も実感ないですね。店によって使う決済もいろいろだし、ポイントが分散されるから。」と言ってコンビニを出て行った。レジそばにいた3名の官僚は30年前と同じように、混乱の無い新税率と軽減税率とポイント還元の静かな船出にほっと胸をなでおろした。

 一人の財務官僚が、缶ビール一本と歯ブラシを持ってレジのカウンター前に立った。そこでおでんを指差しこう言った。「えーと、だいこんは持ち帰りでがんもどきはイートインにします。同じ容器でいいですよ。ビールと歯ブラシと一緒にQR決済にしてください。それからその同じ容器に追加で、はんぺん入れて持ち帰りで、こんにゃくはイートインにします。追加の二つは現金で支払います。」レジの店員さんは、ほとんど信じられないといった表情を浮かべたが、素早くレジ入力を行ない、レシートと釣り銭をスーツ姿の官僚に手渡した。

 さすがに決済の隅々まで知り尽くした能吏だ。ビールは税率10%、歯ブラシも10%。持ち帰りおでんは8%、イートインは10%。しかもキャッシュレス決済の5%還元でそれぞれマイナス5%で、税率は5%、3%となる。そして現金支払は還元無しで、10%、8%のままだ。一枚のレシートにきれいに10%、8%、5%、3%の税率が現れる。レシートを確認しながら、再び記念写真を撮っている。もちろんその場で支払う税額が、安くなるわけではない。客側は一旦税額を店に支払う。レシートにはその後加算される還元ポイント額が、商品ごとに印字されているだけだ。しかもここには財務省のクレーバーな小技が隠れている。アルコール飲料は、5%のポイント還元から除外され、キャッシュレス決済の特典であるポイント付与の対象外となっているのだ。タバコやお酒も、切手や金券と同じ計算処理で、ポイント還元対象外にする事は容易い。税収確保のためのアイデアだ。

 3人の官僚はレシートを検分しながら、全税率、決済の種類、軽減税率の計算、ポイント還元適用、不適用。すべてお見事な出来栄えと、自画自賛している。宿願の消費税率10%達成の為に「急がば回れ」で「何でもやってきた」この一年。感慨無量とはこのことであろう。

 支払を終えた官僚は、イートインコーナーで早速「がんもどき」と「こんにゃく」をほおばり「おでんの季節がやって来ましたね」とうれしそうだ。そこに局長がワンカップの日本酒を購入して座った。「おっ、熱燗ですね」レンジでチンした日本酒を三人で回し飲みをしている。「ここからがお楽しみですぞ」ワンカップに四分の一ほど日本酒を残し、おでんのつゆをいっぱいに注いだ。そして再度レンジでチン。おでんのだし割りの完成だ。

 カメラマンもそばにいるというのに肝と腹がすわったお方だ。そこで有ろう事か、局長が持ち帰りのはずの「だいこん」と「はんぺん」を、もぐもぐと食べてしまったのだ。にわかの事態に素早く反応してしまう報道カメラマンが、その一部始終を撮影したのは言うまでもない。唖然とした記者に局長はこう語りかけた。

 「ワシらとても軽減税率には反対じゃった。だが大将は増税延期の判断をしてくださらなんだ。元々マイナンバーカードを使った税負担の軽減策こそが、この電子化されつつある社会でとるべき道だと思っていた。明日の朝刊にはこう書いてくだされ。『局長自らテイクアウトをイートイン』口に入るもんは軽減で良かろう。酒は別じゃが。その明日の朝刊がワシにできるせめてもの罪滅ぼしじゃ。税のことを考えながら腹を満たす世の中など見とうないわ。」

 その後の食品を扱う事業者による消費税申告納税が、温情に充ち満ちた運用となった事は言うまでもない。

 ここで4つの税率を表にしてみよう

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レシート明細

  クレジット決済会社によっては、独自ポイントを付与している。その場合の税率までも考えると、6種類の税率が出現する。さらに資本金5000万円以上の店舗はポイント還元の適用対象外となる。たぶんそうなると2%から10%までの実質消費税率となるような気がする。たった9ヶ月間の特例としても、これは新タイプのなかなか思い切った作戦だ。というのも、買う物の種類、店舗規模、決済方法、決済会社の独自規定により9種類の実質税率があらわれる。消費者が実感として計算できる範囲を超す可能性がある。となれば税額を10%なり8%なりを店舗に支払っても、実質税率がわからなければ、その時点でステルス消費税となるだろう。確かに江戸時代では、金、銀、銭の三価制度であった。高度な計算能力はこの国の伝統ではある。しかしポイント付与後にしか負担率を実感出来ない税率構造は、高度な撹乱戦法であると言える。その複雑なタイプを表にしてみよう。

 ステルス消費税率戦法

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ステルス消費税率構造

 敵に塩を送ることににもなるが、今回のポイント還元策を成就させるための方法を考えてみた。1、一回の決済につきポイント還元を500円までにする。つまり一回、一万円までの買い物にポイント5%が付与される。同一日時、同一店舗で分割決済の方法は残るが、分割の意図は電子記録に残る。2,ポイント還元率5%にするのではなく、税額の50%分のポイントを還元する。たとえば持ち帰り食品8%に対して4%分の還元とする。3,レジスターからプリントされるレシートの印字項目を増やす。たとえば宛名入れ用レシートには税額・ポイント還元額を印字するなど。4,すでに夢の中で述べたが、アルコール飲料はポイント還元対象外とする。金券、切手などをポイント対象から外す設定が出来るならば、同じ処理で還元対象とならない品目を増やすことは可能。5、これらの方法により、日常生活、生存消費の決済が還元対象に広くカバーされる効果。6,増税前には高額商品消費の前倒しになるが、日常消費は先送りとなる。還元期間終了前の日常消費の前倒しを招くが、高額商品には中立で影響しない効果。などが考えられる。しかしこのような策を弄しても、逆進性と転嫁の問題が解決されるわけでは無く、日常生活消費の多い層に多くの負担率を求める消費税の仕組みが変わるものでは無い。

 さらに強力な究極の一手は、タックスホリデー

 ポイント還元はコンピュータのプログラム操作に基づき実施される方法である。しかしそのような手順を踏まなくとも、減税感を享受する(させる)方法が世界各国で実施されている。タックスホリデーである。消費税を申告する事業者の、課税期間中のその時期だけの税額または税率を減額する仕組みだ。レジスターなどの決済インフラに対する調整を最小限にとどめ、消費税申告時の書類上の調整で実施できる。減税額は実際の決済ごとに計算表示されても良いし、店舗それぞれの発行するポイントカードに反映するのみでも良い。その方法は店舗各自の自由だ。お得で楽しいお祭的雰囲気が魅力だ。しかし実際に減税されるのは、事業者であって消費者では無い。またお得感をうまく演出出来ない事業者、業種は厳しい競争にさらされる懸念も生まれる。

(2019/01/18)