消費税の未来・荻原博子氏の論説に消費税の未来を視る

 このところ連日のようにポイント還元やらプレミアム付き商品券といった目くらましのような記事が一流新聞の一面に踊っています。しかし勝ち組報道機関に対して、事態を冷静に分析するジャーナリストも健在です。 に連載された荻原博子氏の以下の記事をご紹介します。

来年の消費増税、見送りの可能性(1)…安倍首相、再び選挙のカードに利用 | ビジネスジャーナル

来年10月の消費税増税が再々度延期される具体的理由を、誰が聞いても明解な、三つの要因・事象をあげて説明しています。

 特に記事中二つ目の理由として上げている「トランプ」要因は、日本国内の事情がどうであれ、米国が消費増税を許さないという強力な米国からのメッセージを含んでいます。その意志はトランプ大統領が就任早々に提起した「国境調整税」にもあらわれています。関税に関わる日米貿易交渉の問題は、日本と付加価値税を導入していない国との間で、必然的に発生する問題と言えます。もともとこの論点は岩本沙弓氏が数年も前から著作などで発言されてきたものです。岩本氏と荻原氏との対談もユーチューブで見ることが出来ます。

 

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 しかし通り一遍の付加価値税導入国と地方政府による小売り売上税導入国との非関税障壁と考えてしまうと、思い違いや事実認識に盲点が発生してしまいます。輸出業者への消費税額「還付金」イコール政府からの輸出業者への「補助金」イコール「リベート」イコール「ダンピング」が米国からの非難の図式であり、米国製品の輸入時の消費税課税が非関税障壁であるとする見方が一旦成立します。しかしこれは付加価値税の理論から言えば当然の税の流れであり何ら非難を受ける仕組みではありません。

 この図式に隠れた盲点というのは、輸出企業が日本国内の取引先に支払った仕入れ時の消費税額についてです。親会社が子会社に支払う仕入れ代金に、確実に税額が転嫁されているのかどうか、現在の日本の消費税制度では曖昧なままで税法が構成されています。納入業者とグロス総体で合意した仕入れ代金があり、そこから消費税額は割戻しで計算可能です。納入物品が、鉄やガラスのような素材物質であれば、税額を転嫁することは容易いと思われます。しかし輸出企業が仕入れた部品製品などの価格には「人件費」が相当含まれています。その人件費も正社員と派遣社員という税法上の分類がなされます。派遣社員に対する労働力の価格評価は、強い立場の主導で行われるのが常です。子会社は派遣会社・派遣社員を利用することで、消費税額の支払先を課税庁にするか派遣会社にするか自由に選択、調整できるのが消費税という仕組みです。輸出企業は部品を組み立てて完成品を作ります。さらにここでも正社員と派遣社員の比率構成を調整することで、国から還付される還付金額を自由に調整することが可能となっています。これらの事象も日本国内での適正な経済活動であり、その仕組にわずかな非正当性も存在しません。理想を言えば派遣会社が非正規社員に、消費税を上乗せして給与を支払えば良いと思いますが、それでは大幅に消費税収が下がるのでしょう。この例を見ても消費税制度がいかに低所得者に厳しい制度であるかが実感できます。

 米国が付加価値税を導入しない理由は、州政府による小売り売上税があるためです。売上税はB2Cの段階のみに課税されます。B2B間の決済には課税されません。さらに連邦政府による流通、還流する決済に課税する制度設計は難しいのかも知れません。米国が付加価値税を導入しない理由として、岩本沙弓氏は著書の中で、日本の消費税のように価格に税が埋もれてしまい、正当な転嫁が実現できない。相対する取引者のちから関係と販売する事業者の競争力により、正当な転嫁の実現は難しいため。と書かれていた気がします。

 米国のリアルタイムの税制度事情は、秦正彦氏のブログがすばらしいです。私などでは理解できないグローバルな視点・論点にあふれています。

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