消費税の未来・フェリックス・マーティン『21世紀の貨幣論』の最終ページの続きを書いてみた

 「消費税の未来」のブログは2016年から一年あまりに渡って、40篇を書いて来ました。2016年7月に再度の増税延期が決定し、ほっとするあまりに、2017年1月に書いたメソポタミアトークンの話と輸出戻し税に関するアイデアを最後に、現在まで中断をしていました。

 その間に私も決して消費税のことを忘れたわけではありません。日本国で取得をした『スマートタックス®』税制のソフトウェア特許を欧米中に出願審査請求をしていました。ところがこれがなかなか思う通りに事が運ばず、現在各国から拒絶査定などが押し寄せています。現在各国の代理人の皆さまが知恵を絞って応答書を提出して頂いている状況です。本当に現地代理人の皆様のお力添えとご理解とご協力に心から感謝しております。

 さらに数年前から別の技術分野で、新しいアイデアが湧いてしまい、こちらの方はめでたくこの8月に日本国の特許査定が通知されました。特許掲載公報も多分11月頃までに掲載されると思います。このアイデアは幼年期に誰もが目にしたスーパーヒーローが使っていたアレです。空想科学物語は必ず実現するという良い例になると思います。

さて本題の『21世紀の貨幣論』ですが、お金2.0ならぬ「お金3.0」の時代にもはや突入してしまうのが『スマートタックス®』の税制度です。すでに現段階で単なるキャッシュレス社会を飛び越えて、本来の貨幣の持つ意味「相互的扶助行為と互酬的実践行為」を内包しています。アリストテレスの言う「メタドシス」は与え、献じ分与するアルゴリズムが社会的に必要とされています。その理想に近づくために以下の文章を書いてみました。

 

QRコード決済が日常となった国の人々であれば、もうすでに新たな貨幣感覚を身につけている。ところが現金を使わないからと言って、『21世紀のマネー』を使いこなしているとは言えない。

 『21世紀の貨幣論』作者: フェリックス・マーティン,『 Money: the Unauthorised Biography』:Felix Martin,遠藤真美訳 出版社: 東洋経済新報社 発売日: 2014/09/26 の最終ページで著者はこう読者に問いを投げかけている。「本当にマネーを改革しようとするなら・・・」「自分でやらなければだめなんだ」

 えっ、どういうこと?いったい何を?いままでの貨幣観がまちがっているのは、ヤップ島の大きな石の貨幣から始まるこの本の話で確からしい。いままで見えなかったマネーの潜在的な力が発揮できると言っても。そんな大それたことを自分自身で改革するなんて。この著書の最後のページには具体的な方法や手段は書かれていない。もしかしたら著者のマーティン自身にだってわかっちゃいないようにも思える。ひとつだけわかっているのは、「お金を管理するべきなのは自分自身」だということ。本当にお金を管理するべきなのはイングランド銀行でも、IMFでもない。

 人類が発明した最強の自治の道具であるマネーを自分自身が管理して、もっと上手に社会を管理する方法。誰もが思いつきそうで、誰でも参加できて、誰も気づくことの無かった手段。そしてわかっちゃいるけど怠っていた部分。果たしてその方法とはどのようなアイデア・発明であるのか。

 ここは私なりの想像で、マーティンとその友人との会話の続きを書いてみよう。

 

「だとすれば、本当にマネーを改革しようとするなら・・・」

「マーティンちょっと待て。ここからはおれに話をさせてくれ。君の長い話をずっと聞いてきたんだ。おれにだって思いつくアイデアもあるってことさ。これは現金をどう捕まえるかって話だ。おれの財布に入っているこのキャッシュ、100ドル札一枚と10ドル札一枚」

「起業家にしてはさみしい金額だな。おっと失礼、このニューヨークではデビットカードとクレジットカードがあれば、買い物に不便は無いということだ。話をつづけてくれ」

「ここにある二枚の紙幣。物質通貨というものだ。物質と言っても古今東西ATMの機械をスルーできる物質は、この現金しか存在しない。ATMの中に入ってしまえば預金通貨となる。もちろんこの二枚の紙幣もATMから出てきたものだ。」
「そんなことわかりきったことだよね」
「それじゃ聞くけど通貨とは何だろう?」
「ランダル・レイの現代貨幣理論によると、国家が税金の支払手段とさだめている貨幣のことだ。」
「ということはこの二枚の紙幣にも税が含まれているってことさ。」
「このニューヨークならセールスタックスは8.75パーセントだ。だけど衣料品は100ドルまでは非課税だし、何か実際に買い物をするまでは、含まれている税額はわからないものだ。」
「そうだとしてもこのキャッシュの中に税額が含まれている可能性があるのは確かだ。次に話を進めよう。今度は単純な算数の話だ。」
「おまえの話っぷり今までのおれと立場が逆になったみたいだな。」
「そうさマーティン。君はまだ気づいていないからさ。続けよう消費者CがBとGにお金を振り分けて支払うにはどうしたらいいかい?」
「Bに何ドル、Gに何ドル、って数字を二つ使えば簡単だ。」
「その通り、ところが今の世の中の常識はぜんぜんちがう。預金通貨が記帳される銀行口座にはたった一つの数字しか記録されていないはずだ。たとえセールスタックスを含んでいても。」
「まさか?おまえ、本当に貨幣を大改革させるつもりか?」
「そうさマーティン。ところが俺たちがレジで商品を買う時にはすでに二つの数字を使っているのはわかっているよね。本体価格と税率だ。」
「その通りだ。わかった、おれにも少し話をさせてくれ。二つの数字とは税率の他に、税額でも良いし。本体価格と税込価格でもいいはずだ。どっちにしても受け取ったレシートには、しっかりと本体価格と税額と合計金額まで印字されている。おれたち自身が店に支払った税額と、納税をしたという意思は、レシート上ではっきりと示されているはずなんだ。貨幣が誕生してからずっと間違えてきたこと。それは商人たちが決済を記録する時に、一つの数字しか使ってこなかったってことだ。ところがどうだ、本当の事実のありのままの数字を印字したレシートには三つの数字が記録されている。この三つの数字を使えば、ちょっとした工夫で消費者であるCが国に直接セールスタックスを支払うことができる。リヴァースチャージというわけだ。」
「なるほどマーティン。その三つ目の数字がキーポイントだぞ。本体価格、税込価格はバーコードで読み取られる。そして合計金額(実際に取引相手に支払われる金額)に本体価格を入力すればリヴァースチャージ。税込価格を入力すれば、現行制度と同じくショップに税額が支払われる。」
「ちょっと待ってくれ。だがおまえの言う大改革はこの21世紀中に実現するだろうか?キャッシュレスで決済するなら、ショップに支払わなかった税額を記録しておいて、消費者Cの口座から納税することができる。だが現金の存在を忘れていないか?」

「ここでさっきの現金の話にもどろう、ニューヨーク州の税率は忘れて仮に税率を10%としよう。俺がATMから引出した110ドル。この現金に含まれている税額は、11分の1で10ドルとする。その現金を引出した時点で、税額を間接的に納税をした事にして、支払い間接税欄に10ドルと記録をする。そのまま現金を使わずにまたATMに再び入金すれば、受け取り間接税欄に10ドルが記帳される。出金も入金も自分のキャッシュカードが使われている。」

「うーん、それがおまえのアイデアか。それでどうなる?」

「ショップで本体価格100ドルの買い物を現金でする。レジには本体価格100、税込価格110,実際入金額110、と打ち込まれる。本体価格、税込価格はバーコード読み取りだ。税率は規定の10%、この条件ならば、買い物をする俺は携帯電話などの情報伝達手段は持っていなくとも、自分の口座には税額10ドルを間接的にショップに支払ったと記録ができているわけだ。」

「そうゆうものか。その税額を自分の口座から直接国Gに支払う場合には、実際入金額のところに100と入力する。この直接納税形式のときには携帯電話が必要になる。そうおまえは言いたいんだ。しかし複数税率や非課税の場合にはどうなるんだ?」

「まず直接納税形式の説明だ。レジスターは現金を受け取るためにある。レジは始めっから現金の中には税額が規定の分だけ含んでいることを知っているんだ。直接納税の場合、受け取った現金額100ドルの中にその11分の1の額が俺の口座に記録してあることがわかっている。だから携帯電話の中のアプリの補正欄に、11分の1の額を数字で送信する。その補正欄の数字は俺の口座の受け取り間接税欄に転送入力される。そして差し引きされて間接税欄は9.0909ドル分だけ消去される。使わなかった現金の10ドルに含まれる税額0.909ドルだけが間接税欄に残高が記帳されている結果となる。それと同時に俺の口座の支払い直接税欄に10ドルが、携帯電話を通じて転送記録されるわけだ。」

「図表とシステム図で説明してもらいたいなあ」

「次に複数税率や非課税の場合だけど、直接納税形式のレジスターの計算方法と携帯電話に送る補正額と直接納税額と、全く同じ作業をするだけで、正しい税額がおれの口座に記録される。ここのところがこのシステムで一番威張れるところだ。」

「そうかあ・・・いまいち実感がなあ。」

「マーティン、ここはニューヨークだ。いままでセールスタックスの国でのイメージを押し付けてしまった。VAT『Value-added tax』に置き換えてみても、ほぼ同じ機能と計算とシステムだ。違うのはVATは課税期間を設定する点。セールスタックスは小売店最終消費者のみが課税される点。このシステムでは、帳簿構造の税額欄を備えているため、その口座が受け取り税額が多いか、支払い税額が多いか、はっきりと区別ができるんだ。」

「うん、それはすぐれた機能だ。」

「少しはわかってもらえたかなあ。このシステムでは消費者も事業者も全く同じ口座情報管理装置を使う。しかも数値を記録する場所は現在の口座と同じ場所。それぞれの個人や事業者が選択した一つの金融機関の口座だ。その国の全ての決済を中央集権的に管理するシステムではなく分散されて記録される。あるいは個々人が選択したクラウド上でもよい。」

「そうだね金融機関のAPIと連携してこれは様々な方法が考えられると思うよ。」

「現金を捕まえること。ただ社会の進み具合、税制度の進展に応じて段階的にシステムの完成度を高める。一気に高額紙幣を廃止する必要もない、VATなら現金に使用期限を与えると同じような意味もある。課税期間が終了したら帳簿はリセットされてゼロから始まる。それでも手持ちで使い切れなかった現金は間接納税で買い物をすれば良い。その他種々のケースを想定して検討するべきと思っているよ。」

「決済をするときに入力される3つの数字で、納税者の納税する意思と納税する額と納税する方法が一緒に電子化できる。電子化された情報はどのようにでも加工できる。現在日本で施行されている消費税の問題点は転嫁と逆累進性だ。この問題に対しても細やかなプログラムの加工によって対応できると考えられるね。」

「わかってくれてうれしいよ。マーティン。君が言っていた『自分でやらなくてはダメな』こと。それはレジスターの前に立って、バーコードを読み取って表示された本体価格と税込価格。そしてその時にこそ自分の意思で選択をするんだ。間接納税で店に税額を支払うか、直接納税で自分の口座から直接国庫に納税をするか、あるいは直間併用納税か、を。なんだマーティン、君は最初から『21世紀のマネー』を知っていたんじゃないか。」

終わり