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消費税の未来・米国への輸出企業が輸出戻し税を還付請求しなかったらどうなるか?

貿易相手国との関係はお互いがハッピーになることが理想です。巨大な貨物船も、双方が幸福になる七福神の乗った宝船であってほしいものです。

今回は、消費税導入国の日本と最終消費者のみが売上税を支払う米国と、お互いがうれしくなってしまう方法を考えてみました。

表1 輸出戻し税の仕組み

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はじめから表の説明となりますが、数字を比較して読みやすくするために消費税、売上税、法人税率をすべて10パーセントに揃えました。さらに各社とも税引前利益を20パーセントに仮定してあります。

この表は現在、日本が米国に商品を輸出した時の消費税の受け渡しを示しています。消費税は最終消費地で課税されるのが原則です。(仕向け地主義)

米国には付加価値税がありません。州の小売店には地方税としての売上税が課税されています。売上税は小売店が販売商品の価格に税額を転嫁して最終消費者に販売する仕組みです。

表1に見るように米国の輸入社は日本の輸出社に消費税を支払うことはありません。日本の輸出社は生産社に支払った消費税額を米国の輸入社から受取ることが出来ません。その為すでに生産社に支払い済みの税額分を国から還付をしてもらう必要があります。「プラス5」と書いてある部分が輸出戻し税です。(輸出還付金)

この表の消費税の受け渡しの流れを見る限り、この還付金について日本が非難を受けるいわれはまったくありません。輸出還付金は国際間の税を調整する必要があって認められている税構造です。

今度は逆に米国から商品を輸入する場合を考えてみます。米国は付加価値税を導入していません。その輸入する商品に日本の関税がかかっていないゼロだとしても、日本の輸入社が保税地区から商品を引き取る時に消費税を納めないと輸入ができません。実質的な関税となっています。

ところがです、仮に日本が米国と逆の立場になったら、消費税制度が上記二つの点で「不公平である」と思いをつのらす事は間違いありません。もう一度整理すると1,輸出還付金は輸出企業への補助金、2,日本への輸出にかかる消費税は実質の関税であると言う事です。

しかもです、日本の輸出社の子会社の、米国の輸入社が、本国日本の輸出還付金が有ることを財源にして、米国で「5]安く州小売会社に卸してしまったらどうなるでしょう。明らかなダンピング行為になります。この点は推測ですが。

このようなことは米国から見れば許されざる事態です。

まさにトランプ大統領の言う事は正しいのであって、異なる二つの税制度のある限り米国の不満を解消する事はできません。

もちろん日本の輸出社も米国で現地生産をすることで根本的な解決策を図っています。一企業の努力でルールの不均衡を完全に正すことも出来ませんが、一企業の判断で実質的な不均衡を解消する方策があることも事実です。

今回の主題である「一企業の努力」によるもう一つの解決策をお話する前に、税の転嫁について説明をします。

米国が付加価値税を導入しない理由の一つに、「税の転嫁」の実現可能性があると思います。転嫁の可否はその商品の市場競争力に有ります。その視覚的イメージを図に表します。転嫁される税額は、ちょうど棒磁石のSとNのような特性を持っています。

図1競争力と転嫁可能性

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弱い競争力の磁場にある磁石1の磁力が強くなると、消費税額は本体価格の中に埋もれていきます。強い競争力の磁場に有る磁石2の磁力が強くなると、税額はすべて本体価格に転嫁できます。消費税は市場の需要と供給、価格、品質の競争力によって転嫁がされる場合も、されない場合もありうる税制度です。

起業間もないベンチャーは、付加価値税制度の中では利益が出せなくとも付加価値税を前段階の仕入経費で負担します。法人税であれば純利益が出た段階で課税される事になります。また競争力の無い段階で商品を製造販売する場合、税額を上乗せして利益を確保しなければなりません。

表1のように機械的に必ず税額が転嫁されることは想像上の図式です。「輸出還付金」がスッパっと国から支払われる裏には、転嫁を出来なくとも自腹で消費税を納税している淘汰されつつある競争力の弱い事業者の存在があります。

かなり愚痴っぽくなりましたがここからが本題です。

この方法はこのブログのタイトルそのままです。一企業の自主的な判断で行なえます。何の法律も改正する必要もありません。ただ対米輸出にかかる分の消費税還付請求申告書を税務署に提出しないだけで済みます。

輸出社には当然輸出還付金分の欠損が発生します。その欠損金分、対米輸出商品の輸出額を高くします。一律に商品の値上げをする必要はありません。米国内で価格競争力の高い商品だけを選んで値上げすれば良いのです。輸出社の作業としてそんなに難しい事では無いでしょう。

特に日本の財政にとっては、その結果のメリットは大きいものです。

表2日本の輸出社が消費税還付申告をしない場合 

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米国内で販売される商品が値上げされる額は、日本の生産社が消費税納税をした額となります。日本の輸出社が輸出した金額に税率を掛けた額ではありません。表2で言うなら「5」です。

その結果、どういうわけか消費税の仕向地課税の原則が消滅します。結果的に輸出社が仕入れた商品を、輸入社が日本国内で消費した形となります。不思議なものですが、この数字が日本にとって、とてもうれしいことになります。消費税収が増えてしまうのですから。

事実上米国の最終消費者が購入した商品の対価の額に、日本に納税される消費税額が含まれていて、国際間で税額が移転する図式です。

決して日本にとっても米国にとっても、割りの悪いプロットではありません。

そして嬉しいのは米国も同じです。輸入品が価格競争の面でわずかに不利になる点です。輸入品の売上高が値上げ分増えれば、州の財政にも寄与します。あるいは日本の商品の代りに、米国の商品が消費者に選択される事こそ望まれている事です。

そしてもう一つの不公平感、消費税が関税にあたるという点です。この理屈も完全に論破できます。米国には州の売上税が有ります。米国が日本車を輸入する時点で関税は2.5パーセントかかります。加えて最終販売時点で各州の売上税がかかります。

日本車には結局、合計10パーセント前後の税がかかるわけです。輸入時点の入り口でかかるか、消費者段階でかかるかの違いです。米国の車を日本に輸入する場合関税率はゼロです。しかし消費税がかかります。

仮に日本の保税地区から出庫する段階の消費税課税をゼロとしても、流通段階で課税される消費税額の合計は現在なら8パーセントです。輸入社の支払う消費税額は税関に払っても、すべてを税務署に支払っても全く変わることはありません。

最後にこのアイデアの結果の両国のハッピー度を表にして示します。

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