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消費税の未来・先送り症候群にハマった消費税インボイス

インボイスとは事業者がものを売った時に発行する請求書の事です。課税商品を売った時には課税額も記入されます。事業者が消費税を税務署に納税する場合、ものを売った時に発行したインボイス記載の受け取り税額から、仕入れや、経費にかかった支払い税額を差し引くことで、納税額が計算される原則です。

現在の日本の消費税制度では、年商5000万円以下の事業者は、みなし仕入率で税額が計算されます。本則課税の事業者でさえも課税売上と課税仕入れ、経費に税率を掛け算をして、納税額が計算されています。単一税率だから出来る業です。

軽減税率が導入された場合、4年間は「区分記載請求書」という簡略な方法で税額を計算します。その2年後に「適格請求書」という日本式インボイスが使われることとなりました。その時点で「差し引く」という計算方法が、日本の消費税でも、選択的ではありますが、使われることになります。

ここまでの仕組みが今年の国会で法律として成立しています。

その後「新しい判断」により、10%への増税が二年半延期されました。

この時点でインボイス導入時期は、明らかにされていませんでしたが、インボイスの導入時期も二年半の先送り方針が決まったようです。(2016年7月28日付け新聞に掲載)

増税先送り」イコール「軽減税率先送り」、「インボイス先送り」イコール「計算方法改革先送り」に至る行動がどのような心理に由来するものかを少し考えてみました。

先送り症候群には6つのタイプが有るという。

「先送り症候群」6タイプ別病状と処方箋:PRESIDENT Online - プレジデント

①完璧主義タイプ ②効率主義タイプ ③心配性タイプ ④白昼夢タイプ ⑤自分探しタイプ ⑥リスクテイカータイプ(危機を好むタイプ)だそうです。

政策の先延ばしは、人間個人の場合と違って集団の心理と言えます。しかし今回の場合、ひとり安倍首相の「新しい判断」によって決定されたわけですから、人間個人の心理と同様とも思えます。

安倍首相が「新しい判断」と言うからには、単なる「経済情勢による判断」以外の意味も含まれているはずです。

私には今回の増税延期の心理が、どのタイプに当てはまるのかよくわかりません。あるいはいくつかのタイプが複合されているのかも知れません。

そこで各タイプごとに増税を先延ばしにした理由を、私なりに勝手に想像してみます。

①完璧主義タイプ 「中途半端ならばやらないほうがマシ」

今度の国会でせっかく成立した軽減税率の法案。しかし経済学者や税制度の専門家、現場の経営者、税理士の団体などなど、こぞって軽減税率への賛同は見られない。財政の専門家は税率を10%にすることには賛成だが、逆進性対策としての軽減税率には疑問を持っている。あるいは税構造には無関心のようだ。

給付付き税額控除、総合合算制度という手段もあるが、一部の所得が捕捉されない以上完全な制度とは言えない。

処方箋>>>国民がこうむる迷惑は重々承知。完璧な税制度など世の中に存在しないと訴えて、無理を押しても日本式消費税に軽減税率を導入してしまうのが、先送りを避けるための唯一の選択。

②効率主義タイプ 「失敗したくない、成功せねばという心理の裏返し」

本当であれば、いまころアベノミクスで賃金も上がり、消費も増え、2%のインフレも達成しているはずだった。その環境ならば多少面倒な軽減税率であっても国民は受け入れてくれる。ところが現実は違った。このまま来年の増税を実行したら、店員に持ち帰ると嘘を言って店内でハンバーガーを食べる子供の姿と、更に落ち込んだ消費意欲のニュースが世界中に配信される。

処方箋>>>失敗した政策と言われても良いではないか、財政再建社会保障を担うのは消費税だけでは無い。他の税制度も含めて実を取るのが、名政治家というものだ。

③心配性タイプ 「仕事を始める前に悪い結果を予測して手が止まる。」

消費税を増税する判断というものは、些細な事柄では無い。軽減税率導入は今までに無かった消費税の構造大改革だ。心配している暇など無いし、この心配性タイプは今回の判断には当てはまらない。仮にこのタイプであれば、増税延期の判断時期でさえ先延ばしにしたであろう。しかし悪い結果を予測しているのは前記2タイプと共通している。

処方箋>>>予測や心配は冷静な思考から生まれる。軽減税率に変わる新たな税制度のアイデアさえあれば、ネガティブな感情は発生しない。できれば消費税増税再延期の閣議決定がなされるときに、[冷静な判断」で増税開始時期の期日を、2020年4月へとさらに半年間延期していただきたい。その理由は以前のブログに書きました。

 

smarttax.hatenablog.com

 

④白昼夢タイプ 「空想の世界で達成感を得ている」

先送り症候群の中でも最も症状が重いタイプ。このタイプも今回の増税延期には当てはまらないと思いたいが、この半年間の現実を見ていると、症状がかなり重なってしまう。

日本の頭脳と言える財務省の頭のなかで、空想の軽減税率制度というものが、すでに組み立てられてしまっている。しかもその法案は成立している。逆進性を少しでも解消するためにという使命感は、法律上でも達成している。あとは消費税率2%増税のその日が来て、現実に運用されるのを待っている状態だ。

ところが先に述べた経済情勢やら現金商売の商店主の気持ちを考えると、ほんとうにこれでいいのかなと思ったり、マイナンバーを使った還付案などをもう少し研究するのもどうかなあと思ったり、もする。現実の運用をリアルに考えてしまうと手を付けずに先延ばしになってしまう。

処方箋>>>このタイプの患者はヒロイズムに酔いしれる映画の主人公と言われています。次のような筋書きで演出するのはいかがでしょうか。

ヒーローは始めから増税をする気など無かった。自分が組閣する内閣の時代に5%幅もの大増税をしなくてはならない理由もない。

消費税導入で20年が失われ、さらに5%の増税で今後の20年が失われたと、未来の教科書に書かれないとも限らない。

ここは大局を見極め、事を謀る他はないとヒーローは決断をした。

昨年の9月、財務省案がマスコミに批判された時点で、税制度変革の主導権は握った。

軽減税率を導入することで、税の負担感を和らげる口実になることは知っていた。

しかし増税アベノミクスに対する阻害要因となることは許されない。

ならば、自分自身を大魔神の容貌に変え、財政再建の大義のために、無辜の庶民の村々家屋を壊し尽くし、日々の取引決済に、今まで無かった大福帳を適格に記帳する掟を強要した。

新聞だけに特権を与えたのも、遊びごころに過ぎない。

軽減税率が識者に反対されることは最初からわかっていた。

唯一、複数税率と共にインボイスが導入されれば、欧州の付加価値税と同じ税制度になる効果は大いにある。

また、増税があるから消費をしない村人の気持ちも十分に理解をしていた。

ここで6月初めの「新しい判断」が示される。高田美和演じる花房小笹が流した涙に、大魔神の様相は穏やかな武神の表情に変わり、やがて土くれとなって崩れ去り、風の中に消えてゆくのであった。(映画大魔神ウィキペディアより)

ここで映画は終わってしまう。

⑤自分探しタイプ 「先延ばしするのは、自分の中で優先順位が低い」

実はこのタイプが今回の場合、最も当たっているような気がします。

消費税の問題は、財政、金融、経済、貿易、社会保障少子高齢化などの分野に深く関わる政策課題です。

一方外交、安全保障、憲法、エネルギー、環境、教育の分野は、消費税と直接関連することではありません。

もちろん消費税に関わる課題を二の次にしている訳もありません。単にスッキリとした逆進性を解決する策が考えつかなかっただけの事と思います。

しかし結果的に増税延期、インボイス延期となった事も事実です。

究極の選択を迫られた時に、事を進めるか、立ち止まるか誰しも思い悩んでしまいます。しかも国民生活の隅々にまで影響を与える大きな課題です。

処方箋>>>増税延期、インボイス延期の決断は、未来の消費税の姿を考え直す事までも延期にしようという判断ではありません。

幸いに、日本の頭脳が軽減税率の法案を作る過程で、零細商売、農山漁業に従事する家々のお金のながれ、現金商売の実態などの再復習が綿密に為されたと思います。

今回の延期の判断を「新しい判断」と表現したのは文字通りの真実と思います。

全くの推測ですが、軽減税率の詳細を法律化する過程で、何らかのアイデアが日本の頭脳により生み出された可能性があります。

新設された経済財政政策調整官という課長級ポストが、消費税の未来に関わりを持つかどうか、私にはわかりませんが大いに目を引く動きです。

本当に困ったな、何か解決する方法は無いものかと考えた時にこそ発明は生まれます。

新しい判断によって与えられたこの時にこそ、じっくりと未来の消費税を最優先に考えて頂きたいと思います。

アベノミクスを上回るパワーを持つアベノタックスに期待したいものです。

⑥リスクテイカータイプ(危機を好むタイプ)「グズの最終形」

 一度の成功体験はのちのちの行動にまで影響を及ぼします。

ここまでに紹介をした5つのタイプ。妥協を迫られ、段取りも出来ず、人目も気にせず、迷いも無くし、現実を直視する。

こだわりを捨ててしまえば、「一挙に仕事ははかどる」「吹っ切れてしまう」わけです。

その時の爽快感が忘れられなくなり、ぎりぎりまで仕事を先延ばしする事が癖になると、プレジデントオンラインの記事に書いてあります。

今回の増税延期は二度目です。一度目の増税延期も見事なものでした。今回の増税延期の決断直前まで、解散総選挙の憶測は根強いものがありました。

危機を手玉に取る術は人智を超えているとも思えます。現に今回もブレグジットがありました。

そして必ず訪れる三度目の正直の2019年10月までに、新たな究極の決断が用意されるのかどうか、もちろん私にはわかりません。