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消費税の未来・大間のマグロは消費税を飲み込むか?

今年11月には、築地の市場は豊洲に移転をする。移転先の広々とした場内で、安全清潔に効率よく生鮮食品が,取引流通されるなら都民としても喜ばしい限りだ。

今回は、せり売りの王者「大間のマグロ」にまつわる消費税の話をしたい。

寿司屋でマグロを食べた人がマグロの最終消費者。対して津軽海峡でマグロを釣り上げた人が生産者となる。

全国漁業組合連合会の「我が国漁業の現況と消費税引上げにかかる課題」によると、小売価格の28.1%が水産物を水揚げした生産者の受け取り価格になるそうだ。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/tenken/05/shiryo03.pdf

② 小売価格に占める流通経費等の内訳(水産物、青果物) 出典:食品流通段階別価格形成調査(2010年度 )

この図表には、青果物ならば、小売価格の45.5%を生産者が受け取っていると図示されている。水産物の流通経費が割高であることを示す数字と言える。

 

前回の話に引き続き、最終消費者が支払った消費税額は、全額が国庫に納税されるわけではない事と、特例措置という法律により、かろうじて制度が保たれている事を検証する。

マグロの寿司の値段は時価であっても、ひと皿100円であっても、お客様が満足ならば申し分無しだ。レジで本体価格に消費税が掛け算で印字される場合もあれば、寿司屋の大将が、五千円、一万円と切りよく計算してくれてもよい。お客と寿司店の双方が納得して飲食代が決済されれば何の問題も無い。

いずれの場合でも、現在であれば、支払った金額には8%の消費税が含まれている。増税延期も決まったことではあるし、ここでは軽減税率の計算などという面倒な話を絡ませることなしに、今食べたばかりのマグロの消費税の行き先について述べる。

税率は10%とする。寿司店で客は税込1,100円を支払う。マグロを釣り上げた漁師の受取額は330円とする。築地のせり市で、550円で競り落とされたマグロであっても、産地出荷業者を通してせりに出品されるため、手取り額はこのような数字になるらしい。

近年は競りにかけられる魚も少ないそうだが、ここでは消費税の流れを説明するための数字として見て頂きたい。

さて、そのせりであるが、落札価格に消費税額は含まれるのだろうか。この点を説明する公式の見解が、以前にも引用した財務省のホームページに掲載されている。

財務省「適格請求書等保存方式の導入」というPDFである。

http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/keigen_03.pdf

 表紙を入れて五枚目に売上側と仕入側に分けてその特例が記載されている。このPDFの説明は、軽減税率制度が施行されてからのものであるが、右上に小さい文字で、現在の消費税法特例とほぼ同じと記載されている。

つまり、マグロを出荷する漁業者が免税事業者であっても、仕入税額控除可能とはっきりと特例が定められている。結論はせり売りのマグロの落札価格には消費税が含まれているということになる。

ならば漁師が受け取る330円には、30円分(税率が10%の場合)の消費税が含まれているという計算となる。

そしてこの漁師が年間1000万円以下の売上なら非課税、5000万円以下の売上ならみなし仕入率(第三種70%)。それ以上なら、本則課税が適用される。

ここまでの説明であれば、せり市場に出品する漁業者の売上高によって、免税、簡易課税措置はあるにせよ、しっかりと消費税額は国庫に納税されるのであるから消費税が制度として疑問ありとは言えない。

ところがである、せりによって税込価格は決定する。今後消費税率が2019年10月に上がったとする。その前日の9月30日と10月1日とで、マグロの落札価格がぴったりと2%分上昇するのであろうか。

 少し遡って消費税率が5%から8%に上昇した2014年4月にせりの価格は3%上昇したのだろうか。二つとして同じマグロなどあり得ないので検証は不可能であるが、少なくとも本則課税の漁師にとっては、せり値も税率分上がってもらわないと、利益からの持ち出しになってしまう。

築地市場から川下の流通段階であれば、消費税額転嫁の根拠となる価格もせり値によってはっきりとする。

しかし農水産生産者から見れば、自分が納税する消費税額は、農水産物が取引される市場によってのみ決まってしまう。はたしてその売り上げた農水産物価格に消費税額が本当に含まれているのかなど、全く確かめることも不可能だ。

ここで、消費税制度を説明するために作られた画像を紹介する。だれでも一度は目にした説明図だ。

消費税のしくみ|税について調べる|国税庁

 

f:id:smarttax:20160606222033j:plain

この図の製造業者の納付税額の部分には、納税額4000円となっている。この図の通りであるなら、先の330円のマグロを釣り上げた漁師は30円を納税しなければならない。(税率10%、本則課税として。現実には経費にかかる消費税額は控除される。)

しかも市場や地方出荷業者から受け取った330円という金額に、税額が転嫁されているかどうか一切確かめることも出来ないままに。

そのうえ軽減税率制度が施行され、インボイス適格請求書等保存方式が開始されると、漁業の仕事にかかる経費はすべて課税事業者から仕入れ、買い求めなければ、経費にかかる消費税額の控除はできなくなる。

2004年4月1日から店頭価格の総額表示が義務付けられた。そして今は税率上昇段階にあるので、経過措置として、本体価格(税抜き)表示が認められている。

そして転嫁対策特別措置法により、買い叩きや本体価格での交渉の拒否について厳しく禁止行為が定められている。それであっても、漁師たちが獲ったマグロは内税取引が強制されている。市場のせり値が外税に変わることで、漁師たちは安心して漁に出られると思うがどうであろうか。

(今気づいたが、この図の製造から小売業者の「売上げ」金額の部分には本体価格が書かれている。通常売上げといえば税込価格だと思う。この三つの事業者は外税方式の会計処理なのだろうか。この図では単に「売上げ」という部分を「本体価格」と訂正すれば良い。)

今後、軽減税率制度が現実になってしまった場合、ほぼ永遠に経過措置、特別措置、特例措置が次々に連発されるおそれがある。ひとつの嘘をついてしまうと、二十の嘘をつかなくてはならなくなるという。

ユダヤのことわざを添えてこの文を終える。

「一つの嘘は嘘である。二つの嘘も嘘である。三つの嘘は政治である」