消費税の未来・本体価格、税込価格、そして実際に支払った金額。この三つの数値が意味するものとは?

                                  2016.3.19

幸福を数値化する。いかにも理科系の技師がやってみたくなる課題だ。そこで私も似たような事を考えた。課題は納税意思を数値化する。

もちろん対象は消費税の納税意思である。間違えてはならないのが、納税意識とは違う点だ。よく源泉徴収制度がサラリーマンの納税意識を希薄にすると言われている。しかし日本だけではなく、欧米など世界中でこの源泉徴収制度は存在する。米国のサラリーマンであれば、全員が確定申告を行うことによって、日本よりもはるかに高い納税意識が養われている。日本の確定申告者数は、国民の五人に一人。それだけ徴税側にとって効率の良い制度を維持していると言える。

話は消費税である。最終消費者はレジを前にして、買い物代金を支払う。果たしてここに納税意思は発生するか?消費税の名称が営業税であれば、消費者にとって税は無縁だ。営業税が付加価値税の仕組みの一環である事を知っていれば、やはりそこに納税意思は発生するかも知れない。

日本の現実を見てみよう。レジから打ち出されたレシートを受けとる。たいていそこには消費税額が印字されている。これが私の納税意思か?レジ内のロールにも同じ金額が印字されているのだろう。お店側から見れば、確かに受け取った消費税額イコール消費者の納税意思なのだろう。

 

だがちょっと違う。


少なくとも、消費税の納税者はお店だ。お店の消費税申告用紙はお店が記入する。そこにはお店の納税意思がはっきりと申告数字で書かれる。ならば私(消費者)の納税意思はどこに行ってしまったのか?これが間接税というものらしい。坦税者に納税意思は必要無い。ここにサラリーマンの源泉徴収制度と同じ作用を感じる。

簡単な表現で言い表すならば、人からお金を集めていながら、集める側は、お金を支払った側の意思を認めない、あるいは証拠を残さない。という事でしょうか?要は金さえ集まれば、財政はやっていける。それが坦税者の利益でしょう。という感覚だ。

 間接税には逆進性がある。所得税のように直接税であれば、国を挙げてのすったもんだも必要ない。

 そこで冒頭の課題「納税意思を数値化する」方法を解き明かしてみたい。

 

 現在、店頭での価格表記の方法は、税率変動段階にあるため本体価格表示も認められている。ただし誤認防止措置として税別であることを明らかに表記しなければならない。

 お店のレジでは店員さんが、バーコード読み取り、手動入力などで商品の価格を入力する。本体価格が入力されれば、税率を掛けて税込価格は算出される。税込価格が入力されれば、税額が割り戻されてレシートにも印字される。あるいはバーコード情報に、本体価格と税込価格と税額が備わっていても良い。

 ここで課題の「納税意思を数値化する」ためには、どのような意思を示して、どのような方法でその意志を数値化して、どのような方法でその意志を記録すれば良いのだろうか。

 納税する意志があるなら税込価格と実際にお店に支払う金額は一致する。

 納税しない意志が認められるなら、本体価格と実際にお店に支払う金額は一致する。

 ここで言う納税しない意志とは、税額をお店に渡さずに、自分で直接納税するという意志である。消費者は自分の意志により消費税額を、間接税でお店に支払うか、直接税として国庫に直接納税するかを、この「実際にお店に支払う金額」を自分で決めることにより、選択できる。

 つまり本体価格と税込価格がお店から提示されたうえで、実際にお店に支払う金額」を自らの意思で決定すれば、自由な意思決定による、「納税意思数値」は見えてくる。

 

例1 消費者が間接納税を選択した場合、税率10パーセントとして

間接納税意思額は、実際にお店に支払う金額」マイナス本体価格

11,000円マイナス10,000円イコール 1,000円

直接納税意思額は、実際にお店に支払う金額」マイナス税込価格

11,000円マイナス11,000円イコール 0円

例2 消費者が直接納税を選択した場合、税率10パーセントとして

間接納税意思額は、実際にお店に支払う金額」マイナス本体価格

10,000円マイナス10,000円イコール 0円

直接納税意思額は、実際にお店に支払う金額」マイナス税込価格

10,000円マイナス11,000円イコール マイナス1,000円

このマイナス1,000円の数値こそが、消費者が直接納税する意思を表した数値となる。この計算方法であれば、税率が複数でも、無限に発生する複合税率でも、レジスターや会計ソフトは、掛け算を使わずに税額を計算できる。さらに直間納税方法を自由に選択することも可能となる。もちろん商品ごとの税率区分は法定による。

 

 それでは、その意志をどのような方法で記録すれば良いのか。この発想を具体化することこそが、技術者の使命となる。すでにレジスター内部には、本体価格、税込価格、税額、受け取った税額、あるいは受け取らなかった税額。は記録されている。

 そのレジスターから、消費者が手にする携帯電話内の非接触ICカードなど、税額情報伝達手段に、情報転送がなされ、さらに消費者は税額情報を自らの金融機関口座、金融IDE,あるいはクラウド又はブロックチェーンなどに記録することで税額情報、インボイス情報の保存は可能となる。

 この過程で、大きな働きをするものが、インボイスとなる。取引者どうしの決済では必ず異なった番号を持つ当事者間で税額情報の交換がおこなわれる。税額に誤りがあれば、お互いは損益が相反するため、厳密な確認が保証される。

 

以上すこし消費税の未来を先読みしすぎてはいるが、現在の消費税問題を考える上での基本的な数字の仕組みを書いてみました。